あがり症改善のマインド|ピアノ演奏の心得

本番は緊張するものです。

しかし、緊張のあまり激しく手が震えると演奏が破綻してしまいます。

あがり症というと、すぐにメンタルが弱いという話題になりますが、私はそもそも性質としてあがりやすい人がいると思っています。

あがり症のためのマインドを考えてみました。

  1. コンディション編はこちら
  2. マインド編(この記事)
  3. 実践・練習編はこっち
♪この記事を書いた人
Yoko Ina

音楽&ピアノ、自然、読書とお茶時間をこよなく愛しています

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そもそも、なぜ弾くのか?

あがり症だと自覚があるのになぜステージで弾こうとしているのでしょう?
ひょっとしたら弾かなくてもいいのかもしれません(いやいや・・・笑)

なぜ弾くのか、
演奏とは何か、
考えてみましょう。

料理は食べる人ありき、音楽は聴く人ありき

音楽は、

  • 作品(作曲家)
  • 演奏者
  • 聴衆

この三者の存在で成り立つ世界です。

料理が食べる人あってこそ!

なのと同じように、

音楽は聴く人あってこそ!

です。

演奏は、
作品の世界を実現して
聴く人と共有する営みです

です。

演奏の大前提をしっかりと心に留めておきましょう。

聴いている人がいてこそ、音楽はそのあるべき姿として実現されます。

理想は高く!イメージは明確に!

弾く人と聴く人が作品の世界を共有するのが音楽です。

何を共有するのか、
自分が演奏する曲の
イメージを明確にしましょう

あなたにとって音楽とは何ですか?
その曲はあなたにとってどういう世界ですか?
どう弾こうとしていますか?
・・・

そういうことを明確にしておきましょう。

出来る出来ないはともかくとして、自分の目指すところは明確にしないと決して伝わりません。

目指すところを明確にして、それが聴いている人に伝わるように演奏しましょう。

その作品が持っている感情を持って演奏する

音楽は感情と切り離すことはできません。

ロマン派のようにはっきりと感情を表現している作品は特にそうですし、そうでなくても何かしら想起される感情があります。

作品の感情を持って演奏しましょう

感情と記憶は密接に関係していて、感情が入っているほど記憶も確かです。

暗譜が心配なら、ただ反復練習に明け暮れるのではなくその曲の感情、そのフレーズの感情をよく味わいましょう。

ミスがなければいいというものではない

そもそも本番の緊張・あがり症は

失敗したらどうしよう
ミスしたらどうしよう
上手く弾けなかったら・・・
という不安や恐怖から生まれます。

失敗しない方がいいに決まっているし、ミスはない方がいいに決まっています。

しかし、ミスがなければいいというものではありません!

ミスはないけれど、
何も伝わってこない演奏と、

ミスはあるけれど
何かしら伝わってくる演奏と、

どちらを聴きたいですか?

繰り返しますが、

演奏は、作品の世界を実現・創造して聴く人と共有する営みです。

目指す世界が伝わるように弾きましょう。

これは、演奏会はもちろん、コンクールだろうが、試験だろうが、同じです。コンクールや試験の成績は社会のシステム上仕方なく設定されたもので、本質ではありません。音楽の本質からすれば”浮世の務め”くらいな取るに足らない存在なのです(とは言え無視できない、人生の重大事であることは十分理解しています。)。

普段通りではなく”演奏モード”へチェンジ

弾く人と聴く人が
共有するのが音楽であり、

何を共有するのか
目指すイメージがある・・・

それを実現するにはハードルがあります。

あがり症・本番の緊張を話題にする時、人前で弾くのは大変だという事だけが取り沙汰されますが・・・

そもそも人前で何かするというのは大変なことです。

考えてみてください。

大きなホールで満員の観客が見ているステージの上に、好物のご馳走が用意されていて食べ放題だよと言われて喜んで食べられますか?

もしも、料理をたらふく平らげることができる人なら、きっとピアノを弾くのだって平気でしょう。

でも多くの人は、どんなに大好物でも満員の観客を前にパクパクと食べるなんて無理だと思います。

人の存在というのは、影響力を持つものです。

世の中には、
人に見られたい
目立ちたい
注目されたい
・・・という人もいて羨ましいですが、

あがり症を自覚する人は、
見られるのは嫌
目立つのは嫌
・・・という方だと思います。

クラシック音楽を愛する人には内省的で孤独を愛する人が多く、人前に出るのも注目されるのも嫌だけど、音楽は好き、演奏するからにはやっぱり聴いている人と共有したいという矛盾に悩み、あがり症に陥ります。

人前に出るのが苦手な人にとって、人前に出るだけで大変なストレスですから、普段通りとか素の自分ではなくちゃんと

演奏モード

にチェンジしましょう。つまり

ピアニストに変身する

のです。

そのためにも自分は本番で何をしたいのか明確にしましょう。

自分の全てを音楽に捧げましょう

人前に出ること自体が苦痛な人にとって、
普段通り弾けばいい
リラックスして弾けばいい
というアドバイスは全くの見当違いです。

リラックスして弾くなどという甘い幻想は捨てましょう。リラックスではなく

自分自身の全てを捧げましょう

オーバーだと思われるかもしれませんが、人前に出るのが苦手で、それでも人前で演奏するというなら、それくらいの覚悟が必要です。ピアノはスキージャンプのように失敗したからと死ぬわけではありませんが、真剣さは必要です。趣味だからと遠慮する必要はありません。音楽は人生を懸けるに値します。

クリスティアン・ツィメルマンは、ショパンのソナタ2番3番について、

”大好きな曲、いつも死ぬ気で弾いている”

と言っています。彼のような天才が死ぬ気で弾くのですから、我々凡人がリラックスして呑気に弾けるはずがありません。

演奏中に素の自分を出さない

演奏に際し、演奏モードになったら、素の自分を出してはいけません。

演奏中に素の自分を出してパフォーマンスを中断してはいけません。

演奏モードを作るのが練習です。
それは練習編で解説します。

演奏に喜びを見出そう

緊張の原因は不安・恐怖です。
人間は不安や恐怖を感じると本能としてアドレナリンが分泌され、緊張状態に入ります(詳しくはこちら↓)

【なぜあがるのか】本番での緊張について知ろう
ピアノを弾いていて 何が悲しいって、 本番で思うように弾けないことほど悲しいことはありません。 あんなに練習したのに、 手が震えて思うように弾けなかった・・・ 頭が真っ白になって、 何を弾いているのかわからなくなった・・・ その惨めさは例え...

緊張は必要なものですが、過剰に緊張するからあがり症を発症してしまいます。

アドレナリンのバランスをとるための鍵はセロトニンです。

理想として、

演奏が喜びならばセロトニンが分泌されます

音楽は作品と演奏する人と聴く人が揃ってこそ!なのですから、演奏は喜びであるはずです。なのになぜ不安や恐怖になるのか?

たとえば、試験やコンクールならジャッジされるのがプレッシャーになってとても楽しめないというのはありますね。しかし、それでも何とか喜びを見出しましょう。どうしても喜びを見出せないなら、そういう場に身を置かないことです。

音楽は人生を捧げるに値します。
好きな音楽に自分を捧げる、なんて幸せなことでしょう!

モデリング|理想のピアニストをイメージ

自分の理想をはっきりイメージするために自分の理想とするピアニストを観察したり真似てみるのも一法です。

すなわち、心理学におけるモデリングです。モデリングとは、何かしらの対象物を見本(モデル)に、そのものの動作や行動を見て同じような動作や行動をすること。

あがり症は、自分自身に過剰に注意を向き過ぎ、こだわりすぎるとさらに深刻になります。なので自分から離れる事が有効です。

誰をモデルにするかはその人の特性にもよりますのでただ単に好きなピアニストでよいというわけではないかもしれませんが、たとえば私はアルトゥール・ルービンシュタインを(勝手に)グランパと敬愛しています。ルービンシュタインをモデルにしているのは、

  1. 優れたピアニストであり、超クールであること
  2. 演奏スタイルや奏法が理にかなっていて、かつ、好みであること
  3. 演奏が素晴らしいだけでなくとても人生の達人であること

などの理由によります。

まとめ

では、あがり症のための心得をまとめます。

  1. なぜ弾くのか、明確にしましょう
    ~理想は高く!
  2. リラックスなんて無理!自分の全てを捧げましょう
  3. 演奏に喜びを感じましょう
  4. 人前で何かするのは大変、普段通りなんて無理です!
    ~演奏モードにチェンジしましょう。
  5. モデリング
    ~理想のピアニストをイメージすることで自分自身への過剰なこだわりから離れましょう

失敗を恐れる心がメンタルを弱くする

最後に・・・

本番で緊張してミスをすると、メンタルが弱いから緊張してミスが出るんだと思いがちですが、メンタルが強ければミスをしないのではありません。

ミスを恐れる心がメンタルを弱くします

ミスはないに越したことはありませんが、しかし、ミスがなければいいというものではありません。

”音楽”を大切にしましょう。

さあ、練習です↓

本番の緊張で手が震える人のためのピアノ練習・実践編
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