大人になってピアノを始める
子供の頃に習った経験があって再開する・・・
素晴らしいことです。
忙しい日々の中で時間を捻出してピアノを弾こうと思った動機は様々でしょう。
きっと憧れの曲があって、弾きたい!という強い衝動に突き動かされていることでしょう。
ここでは、クラシックの名曲、たとえば
エリーゼのために/ベートーヴェン
愛の夢/リスト
ノクターン/ショパン
月の光/ドビュッシー
・・・などを弾きたい人のためにどうしたら夢を叶えることができるか考えてみました。
- マインド
- 身体(指)
- 頭
- 心(感性)
- どれくらいで弾けるようになるか
の順に書いてみます。
大人のピアノが子供と同じテキストでいいのだろうか?の続編です。
マインド|聴くと弾くでは大違い
いきなり脅かすようで恐縮ですが・・・
ピアノを弾くのは決して簡単ではありません。
クラシックのうっとりするような曲想に憧れて弾きたいと思うのはよ~くわかりますが(私もそうです)・・・
聴くと弾くでは大違いです!!
考えてみてください。
とろけるようなスィーツを食べる気分で、そのスィーツを作ることはできないという事は想像できると思います。
同じようにうっとりする曲を弾くのは大変なのです。
特にクラシックを弾きたいなら相応の学習・練習が必要です(そうしないと結局何も弾けません。弾けたつもりになっても人前で弾くと大崩壊して公開処刑の気分を味わいます)。
つまり、そんなに簡単ではありません。時間もエネルギーも(相応にお金も)必要です。
そして、感性だけでなく知性も必要です。すなわち
頭を使わないとピアノは弾けません
歌・管楽器・弦楽器は単旋律でアンサンブルが基本で指揮者や共演ピアニストがいます。
しかし、ピアノソロは一人で完結するので、1人何役+指揮者も自分自身です。
だからピアノには特有の難しさ・大変さがあります。
夢を打ち砕くようで一抹心苦しさはありますが、これが現実です。
きれいごとを並べておだてても、苦労するのは実際に演奏するあなた自身です。
ステージの上で公開処刑の気分を味わうのもあなたです。
なお、そういう大変なところを全部すっ飛ばしてやさしくアレンジした曲を楽しく弾きましょう!という
らくらくピアノ
というのがあるそうです(ぐぐってみてください)。
練習や学習が嫌な方は、いっそそちらをおすすめします(中途半端が一番いけません)。
身体|指は動くようにできている
ピアノを弾くというと、とかく指の問題に集中しがちですが・・・
指は身体全体の一部です
全身の意識なしにピアノを弾くことはできません。
そして、
指は動くようにできています!
身体を動かそう
意外に思われるかもしれませんが、ピアノを弾くには全身への意識が不可欠です。
身体の切れと演奏の切れはリンクしていますし、指先を激しく使うため身体にひずみがおきやすく、肩こり・首や腰の痛みに悩む人は少なくありません。
健康のためにも上達のためにも身体を動かすことを強くおすすめします。
実際、ピアノが上手い人には日常的にスポーツに親しんでいる人が多いですし、プロの中にもテニス、水泳、スキーなどを楽しむ人は少なくありません。
運動が苦手な方も、せめてウォーキングとストレッチはやりましょう。
指(身体)|ハノンよりまず指のストレッチや基礎練習
ピアノを弾くための指の動きは非常に繊細で、日常生活では必要ない動きです。
PCのキーボードも指先でタッチしますが、似て異なる動きです。
PC入力はかなりのスピードで出来ても、ピアノを弾く時には指が動かない・・・と感じる方はやはりのトレーニングをおすすめします。
指のトレーニングというとすぐに
ハノン
という話になりがちですが、私の考えではハノンよりも前にウォーミングアップ・指のストレッチや基礎練習が有効です。
最初はカチカチの手指も三か月ほど続けるとどんどんしなやかになっていきます。
しなやかになれば動きもスムーズで疲れにくくなります。
詳しくは↓
ピアノ弾きのための指のストレッチ|ピアノ・ベーシック・トレーニング
頭|言語には文法、音楽には楽典
ピアノソロの曲はひとりで完結しているので、音が沢山あります。
沢山の音を読み解いて”音楽”として演奏するために必要なのが
楽典とソルフェージュ
です。
子供の頃から習っている人の中には、母国語を理解するように音楽を理解していき楽典など知らなくてもある程度弾ける人もいます(限界があります)。
しかし、大人になってから言語を学習する場合に文法学習が必要なように、大人になってからピアノを弾くなら楽典必須です。「ド・レ・ミ」が読めるだけでは早晩限界が来ます。
言語には文法、音楽には楽典です。
ピアノを弾くなら知っておきたい楽典
クラシックの名曲を弾きたいなら、最低限知っておきたい楽典の知識をあげてみましょう
- ドイツ音名
何かと便利です - 音程
和音を理解するためにも必要 - 長音階・短音階
ピアノでなくても必要 - 和音・終止形(カデンツ)
フレーズと終止形は切っても切れない関係なので知っておきたい - 調性・関係調
アナリーゼンに必要、暗譜の助けにもなるので知っておきたい - 楽語
Allegro、rit. など。その都度辞書を弾けばよいけれど主なものは知っておきたい
楽典は机上の単なる知識ではなく、響きと結びついてこそなのでソルフェージュをしながら学習します。
おすすめの本
楽典の本も色々ありますが、手軽でわかりやすいという点でおすすめしたい2冊です。
まず
タイトル通り、ピアノを弾くための思考法が書かれています。これを読んだからと言ってすぐに上達するわけではありませんが、こういう思考で学習しないと上達しません。ということは、あるレベル以上の人には自明なのですが、初級・中級の方にはわかりにくいようです。しかし、わからないからと言って安易な方に流れるから結局上達しないのです。適切に導いてくださる先生に師事して時間をかけて学習するしかありません。
もう1冊は
こちらは音楽史や楽語、オーケストラの楽器についての解説もあり、コンパクトな文庫ながら1冊でクラシック音楽の基礎知識を学べます。
この2冊は座右の書として繰り返し読みたいです。。。
心(感性)|インプットなしでアウトプットはない
音楽というと、とかく感性の問題にされがちですが、これは大きく誤解されています。
そして、誤解されているから結局上手くいかないのです(これを説明するのは非常に難しいので別の機会にします)。
ともかくですが・・・
聴くことなしで演奏することはできないのです
考えてみてください。
マドレーヌを食べたことがない人が
マドレーヌを作れるでしょうか?
カルボナーラを食べたことがない人が
カルボナーラを作れるでしょうか?
料理が上手な人はもれなく食べることが好きでいろんなものを味わっています。
音楽と料理は色んな点で似ていますが、いい演奏をする人は沢山聴いています。
上手くなりたければ、色んな音楽を沢山聴き、感じましょう!
それも、BGMではなく楽譜を見ながらしっかり聴くことをおすすめします。
参考までにバッハを弾くなら聴いておきたい曲を挙げてみました↓
どれくらいの期間で弾けるようになるか?
色々書きましたが、どれくらい練習すれば弾けるようになるのか、やはり気になると思います。
冒頭に挙げた名曲を弾けるレベルは、他のものにたとえるなら
- 外国語なら中学卒業程度の英語レベル
- 囲碁・将棋なら初段レベル
くらいと考えています。
ということは、それくらいの期間が必要ということ、これについては好きなことわざがあって真理だと思っているのですが、つまり
桃栗三年柿八年
です。
実際には子供の頃に習った経験がある・ない、あるならどれくらい弾いていたかにもよります。経験的には
- 子供の頃にバッハ「インベンション」くらい弾いた方なら1~3年。
- ブルグミュラーくらいまで弾いた方なら2~5年
- 全く初めてなら3~7年
なお始める年齢はやはり早い方が上達が早いことは言うまでもありません。
大人のピアノは
老化 vs 学習
のせめぎ合いをいかに制するかです。
とはいえ、若い頃にギターを弾いていて50歳を過ぎてはじめてピアノに触れて5年後ショパンのノクターン 第9番 Op.32-1を弾いている人を知っています(私が教えたわけではありません)。
今日が一番若い日ですから、とにかく始めることです。
まとめ|夢を実現するためには戦略とメソッドが必要
以上、大人になってピアノを始める人&再開する人が夢を叶えるためのコンセプトを書いてみました。
夢は憧れているだけでは叶いません。
気合と根性だけでは早晩行き詰ります。
楽譜を広げて
ポツポツと
ひとつずつ鍵盤を
たたいているだけでは
永遠にそれっぽく弾けるようになる日は来ません。
夢を実現するには戦略とメソッドが必要です。
ピアノを弾くということは、
指先の運動だけではない
全身運動であり
頭と心もフル回転させる
全人格的な営みです。
ピアノを弾く・学習するということはゴールのない旅のようなものです。
日々の練習をエンジョイし実りあるものにするためにも適切に練習・学習しましょう!
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