【素朴な疑問】大人のピアノが子供と同じテキストでいいのだろうか?

大人になってからピアノを始める方が子供用のテキストを使っているのを見かける度に、素朴に、う~ん・・・と微妙なものを感じる私です。。。

だって、大人と子供は違うのですから。。。

たとえば、英語のレッスン。
大人用のテキストと子供用のテキストは違いますよね。

同じように、大人が子供用のテキストでピアノを始めるのは違うと思うのです(ただし、例外があります。それは最後に)。

大人には大人のアプローチがあるはず。

ということで、大人と子供の違いについて考えてみました。

♪この記事を書いた人
Yoko Ina

音楽&ピアノ、自然、読書とお茶時間をこよなく愛しています

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完成された大人の身体と日々成長の子供

まず、大人と子供は身体が違います。単に、大人は大きく子供は小さいというだけでなく、子供は骨格や筋肉の発達途上にあり、成長が完了した大人とは違います。

ピアノを弾く上で大切な手について言えば、”手根骨”の数が揃うのは大体10歳くらいです。したがってそれ以前にトレーニングし過ぎると正常な発達にも悪影響を及ぼすと言われます。

そんなこんなで子供用のテキストは、まず、身体の発達にあわせて学習をすすめていくというコンセプトで作られています。たとえば、幼児のために書かれた作品にはオクターブや幅広く音の多い和音は無理だから出てきませんし、ffも要求されません。

子供のレッスンのコンセプトは、とにかく「成長を待つ」です。今、できなくても成長に伴って、半年、一年後には自然にできるようになるということが多いです。今、無理なことを要求すると悪い癖につながったり、無理が負担になって結局嫌になってやめてしまったり・・・だから「待つ」というスタンスです。

 

それに対して、大人の身体は完成されています。完成どころか、残酷な現実として40代、50代・・・と歳を重ねるほど老化も気になります。

年齢を重ねるほどに

老化 vs 学習(トレーニング)による上達

のせめぎ合いという側面があります、これが現実(現実を無視して実現はない)。

身体の”構造”と”サイズ”という点で発達は完了していますが、ピアノを弾くために”それまで使ったことのない機能”を呼び起こさなければなりません。ゆえにトレーニングが必要です。

とは言え、意外に思われるかもしれませんが、

経験的にですが、
指を動かすことについては多分、
50代くらいまでならそれほど問題はありません。

考えてみてください。たとえば、PCのキーボードのタイピング。今、50代以上の人たちは大人になってからPCに触れた方が多いはずですが、特別にトレーニングなどしなくても、ブラインドタッチでそれなりのスピードでタイプできるようになっていますよね。

そう、

指は動くようにできているのです!

指が動かないのは、身体機能としての指自体が問題なのではなく頭、すなわち脳の方にあります。

(PCのキーボードを叩くのとピアノを弾くのは違うという突っ込みは、指の動かし方の問題なので今はおいておきます。とにかく指は動くようにできています)

頭(脳)が違うから子供と大人は得意なことが違う

子供と大人では脳の特性として、出来ることや得意なことが違います。

論理的な説明や抽象的な概念を理解できるようになるのは、10歳くらいからと言われています。それ以前の子供は、理屈ではなく環境にあるものをまるごとスポンジのように吸収していきます。つまり、

子供は”真似”が超得意!

それに対して、大人は頭で納得しないと身体が動きません。

子供は良くも悪くも何でも”真似”をしますが、大人は理屈抜きで真似をするというのは難しいのです。何がどうなっていて、なぜそうする必要があるのかetc、説明して納得しないと身体(指)は動きません。

理屈はいいからとにかくやってみろなどと言われたら、逆に”フリーズ”します。

子供が理屈抜きで”真似”によって一瞬で出来ることも、大人は”頭で理解した上で”一定期間のトレーニングが必要です。

子供用のテキストは音が少なく簡単に見えますが、実際に弾くのは大人にとってそれほど簡単ではありません。繰り返しますが、子供が”真似”によって一瞬できることも、大人は”頭で理解した上で”トレーニングが必要だからです。

だったら最初から、練習して弾けるようになったら即!披露できるような曲を厳選して、しっかりと理解しながら練習するべきではないかと思うのです。

 

なお、頭で納得しないと動けないというのは、奏法だけではなく広く深く音楽の内容を理解することを含みます。

考えてみてください。言語を習得するのに、幼児は文法の説明など必要ありませんが(というか、前述の通り幼児に論理的説明は理解できない)、大人になって外国語を始めるなら文法必須ですよね。

言語における文法・構文に相当するのは、楽典とか和声とか対位法とか楽式とか・・・そういう名前で呼ばれている分野ですが、そのような勉強は必須です。

指は動くようにできていますが、現実問題として思うように動かないのは、頭(脳)の問題です。

だから、上手くなりたければ、あらゆる意味でしっかり頭(脳)を使いましょう!

強い想いは百難突破する

大人になってからピアノを始める方は、子供の頃からやっていたら、もっと弾けるようになったのではないかと思いがちですが、それは妄想・・・

ごく一部の本当にピアノが好きな子供をのぞいて(=プロを目指すような子)、一般的に子供に練習させるって本当に!本当に!!本当に!!!大変なのです。

子供のモティベーションをいかに上げるかが、親も先生も最大の問題だと言っても過言ではありません。先生も大変ですが、日々ご自宅で練習させる親御さんのご苦労は本当に涙ぐましいレベルの毎日が壮絶なバトルです。それでも、現実問題、親や先生がどんなに頑張っても、続かない子は続かないです。

なぜなら、多くの子供にとって、ピアノよりも魅力的なものや優先順位の高いものが世の中に溢れすぎているから・・・

ピアノに心惹かれ、弾きたい大人と
心が動かないからピアノから離れる子供・・・

何だかんだ言っても、

人は感情で動きます。

大人になってピアノを弾こうと思うのは、ずばり、ショパンなりリストなり、ベートーヴェンなり・・・素敵な演奏を聴いて心動かされ、チャレンジせずにはいられないからでしょう。

弾きたいピアノを弾かないで、このまま歳を重ねて死んでしまってもいいのか・・・

そう思って始めた方もいらっしゃると思います。

強く願えば叶う

自己啓発本や成功法則のお決まりフレーズですが、やはり心が動くから行動できるのです。練習時間を捻出しようと工夫するのも、日々地道にコツコツ練習するのも、弾きたい気持ちがあればこそ!です。

 

ピアノは、指が達者に動けばいい演奏ができるというものではありません。

大人になってピアノを始める方は、想像される困難を乗り越えるだけの”想い”があるはずです。

それまでの人生での経験からあふれるモノというのは、技術を超えて聴く人の心を動かします。

何より、その想いこそが上達へのアクセルです。

大人のアプローチ~あふれる想いを戦略的に形にする

ということで、大人になってピアノを弾こうとする人は、その「強い想い」を生かしてアプローチしていくことが大事ではないかと思います。

(色んな意見があることを承知の上で、と一応ことわっておきますが)私は、子供用のメソッドは、”子供の心身の発達”にあわせて「成長を待つ」というコンセプトで作られているので、成長が完了し、放っておけば老化によって歳を重ねるほどに衰えていく大人には適当ではないと思っています。

そんな身体能力の限界を超えるのが、強い想いとその想いを実現するための戦略=頭の使い方です。

強い想いを実現するために、頭を使いましょう。
頭を使って音楽を理解しようと努め、
練習方法を工夫しましょう。

そうすれば、指は動くようになります。

 

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