反田&ガジェブがコンクールの秘策を語る音楽会|題名のない音楽会

『題名のない音楽会』で「反田&ガジェブがコンクールの秘策を語る音楽会」(2022.8.20)がとても興味深かったので備忘録です。

♪この記事を書いた人
Yoko Ina

音楽&ピアノ、自然、読書とお茶時間をこよなく愛しています

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音楽教育への想いが二人をつないだ

反田恭平さんとアレクサンダー・がジェブさんは共に2021年10月にワルシャワで行われたショパン国際ピアノコンクールで2位を受賞しました。

コンクール中にとても仲良くなったそうですが、そのきっかけは

音楽教育についての思い

だそうです。

新しいアイディアやアプローチだったり、今までの教え方を変えなければと思っています。

ガジェブ

反田さんは奈良に音楽学校を創ろうと報道されていますし、そんなところが二人をつないだようです。

勝つための秘策|国際コンクールで入賞するために

会場には10代のピアニストたちが国際コンクールで入賞するための秘策を質問しました。

中一男子の

コンクール前日にはどういう練習をするのですか?

という質問に対しての二人の答えです↓

1週間くらい前からルーティンを決める。たとえば、プログラムの通す練習を3回くらいやって、あとは弾き過ぎないようにする。本番前には練習量を増やすのではなくどんどんフェードアウトしていって、実際に自分がいい響きで弾いてみたいというのを本番でやる。

反田

僕は恭平と違いますね。譜面と新鮮な気持ちで向き合うことです。できる限り新鮮で、今まで一度も見たことがないか曲であるかのように、頭をからっぽにします。

ガジェブ

二人に共通しているのは、ともかく弾きすぎないことですね。なぜなら、

練習しなくちゃ!練習しなくちゃ!と思うと何を弾いているのかわからなくなるので気をつけた方がいい。ショパンコンクールの前には1日半全く弾かなかった。

反田

イマジネーションやインスピレーション、音楽に対する新鮮な気持ちを失ってはいけないということだと思います。

本番が近づくと不安からどうしてもピアノにかじりつきたくなりますが、そこをちゃんとコントロールしてこそいい演奏を披露できるという大切な教えだと思います(私も肝に銘じたいです)

ソリストの自覚|オーケストラとの共演

大きなコンクールのファイナルはコンチェルトを演奏することが多いですが、初めての指揮者&オーケストラとの共演は不安なもの・・・

芸大1年生の

ファイナルでオーケストラと共演する時、リハーサルでは指揮者とどういう話をするのか?

という質問に対して

リハーサルは時間がありませんが、コンチェルトの中で指揮者とすり合わせたい箇所を理解していないといけません。曲の中の2,3か所を簡潔に伝えなければならないのです。

本番ではオーケストラを信頼することがとても大切です。

ガジェブ

ショパンコンクールでは以前一緒に弾いた時がある指揮者だったのでラッキーだった(会場笑い)。

ゲネプロでオケと合わなくても本番は「俺がソリストなんだ」とオケを引っ張らなくてはいけない。

反田

シンプルな回答からうかがえるのは、結局、

その作品について自分の考えをしっかり持つこと。

これはコンチェルトでなくても同じだと思いますが、ただ何となく弾けるだけではダメということ。コンチェルトの場合は曖昧だと指揮者とオーケストラとのコミュニケーションがうまくいかないのですね。

言語のリズムは音楽のリズムにつながる

ショパンコンクール2位の二人に聴きたいのはやはりショパンのこと。

桐朋デディプロマ1年の

ポーランド語などは勉強した方がいいか?ショパンの作品の中に語感はあるのか?

との質問に対する2人の答えは

ポーランド語は勉強した方がいい。
ポーランド語はちょっと柔らかい感じがあって、その音のニュアンスを知ることが大事。

反田

言語を一から勉強することはとても難しい。
けれど言語に耳を傾ければリズムを理解できます。
そのリズムが民族舞踊だったりフレージングだったり音楽へとつながるのです。

ガジェブ

これは私も体感しています。

ショパンコンクールの配信を聴いていた時、アナウンスや休憩中の会話からポーランド語のリズムって結局そのままショパンの特にマズルカのリズムだなと感じました。ポーランド語の意味はわかりませんが、わからないからこそ純粋に”音やリズム”として聴こえるんですよね。

そして、

言語とともに民族舞曲を知ることはとても大切。

反田&ガジェブ

これも大事だと思います。

私はマズルカが好きなのですが、それは2006年頃にアンジェイ・ヤシンスキ(当時のショパンコンクール審査員長)の公開レッスンを聴講した時に、マズルカをフレーズ毎に

歌なのか踊りなのか
どういう踊りなのか
アクセントはてを叩いているのか
足で踏み鳴らしているのか
男性が女性をリフトしているのか・・・

などを詳細に解説してくださり、それで初めてマズルカをイメージすることができました。

難しい右手よりも実は左手が鍵

コンクールではエチュードが課題曲となる事が多いですが、中3女子の質問です。

コンクールに向けてOp.10-8を練習しています、どういったイメージで弾いたらいいですか?

に対して、

とてもシンプルで軽やかな音楽、田舎にピクニックへ行っているような感じ。
左手の方が簡単ですが左手の方がより表現的で興味深いと思っています。
なので左手の表現に集中する。そうすることでもっと自由になれると思います。

ガジェブ

(冒頭部分の実際の演奏を聴い)右手が難しいと思うけれど、より簡単に弾く方法として肘を開けて関節をスムーズにする。

反田

ガジェブの答えはとても深いですね。うなずきました。。。

聴きたいと思うように演奏してください

『題名のない音楽会』は最後に”偉人達が遺した偉大な言葉”が紹介されます。

この日は

聴きたいと思うように演奏してください。
いつも自分の音楽に耳を傾けてください。

ショパンから弟子へのアドバイス

でした。

本当にその通り、ただ弾くことに一生懸命になりがちですが、料理するなら食べる人のことを考え自分が食べてどう感じるかということ抜きではありえないように、演奏も自分が聴きたいと思う演奏をするということを忘れてはいけないですよね。。。

2人の素敵な演奏と共に、深く心に刻みたいと思います。。。

追記:反田恭平氏のインタビュー

反田恭平氏の興味深いインタビューがありますので参考までに。。。

他にも先生から強く言われたことは何点かありますが、「頭の中で、何を伝えたいかを強く持つこと」。これは何度も言われました。一曲の中にも、提示部・展開部・再現部とありますが、その中でリフレインされるフレーズは、毎回キャラクターを変えていかなくてはいかない。では、それをどう色付けしていくか。例えば、どれかの一つの音を中心に展開していくだけで、一つのフレーズに何パターンもの個性や表情が生まれてくるわけです。そういうことを、とても丁寧に教えて頂きました。よくよく考えると、先生には4年間でショパン以外の作品はほとんど見ていただかなかったですね。

全文はこちら↓

ピアニスト反田恭平、2年ぶりオール・ショパン プログラムで臨むリサイタルツアーを語る&ショパン・コンクールへの想いも | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス
ピアニスト反田恭平、2年ぶりオール・ショパン プログラムで臨むリサイタルツアーを語る&ショパン・コンクールへの想いも
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