5つのボディワークと
指のストレッチで
ウォーミングアップをしたら、
タッチの基礎練習です。
歌も誰でも歌えます。
でもリートやオペラアリアを
歌うためには発声練習します。
なぜなら、そうしないと歌えないからです。
ピアノも、
力が入っていようが、
ふにゃふにゃの指だろうが、
とにかく鍵盤を押しさえすれば
それらしい音が鳴ってしまいますが
そのタッチではいい演奏は生まれません。
- 練習しているのに弾けるようにならない
- 練習すると手が痛い
- 歌えない
- fは汚くなり、pはかすれる
- 本番で緊張して手が震えると弾けなくなる・・・
悩んでいる人はタッチの基礎練習をしましょう!
思うように弾けないのはそもそもピアノの音が鳴る仕組みを理解していないから
ピアノは、簡単に音が鳴るけれど、演奏するのは決して簡単ではありません。
ピアノ弾きの悩みは、
ピアノの音が鳴る仕組みを
よく理解しないまま、やみくもに
指を動かしているために起こります。
ピアノの音が鳴る仕組みを考えた時、ピアノを弾く上で大切なことが2つあります。
- 鍵盤を押し下げてエスケープメントレベルを通過する時にハンマーが跳ね上がって弦を叩き音が鳴る。
- 鍵盤を指で押し下げると指は鍵盤から押し上げられる、すなわち作用反作用の法則。
順に解説します。
エスケープメントレベルを通過する時に音が鳴る
ピアノの音が鳴る仕組みを簡単におさらいしましょう。
ピアノは鍵盤を下げると音が鳴りますが、
音が鳴るのは鍵盤が底に着いた時ではなく、鍵盤の底から約1mm上のエスケープメントレベルと呼ばれるところです。
エスケープメントレベルを通過する瞬間に
ハンマーが跳ね上がって
弦を叩くことによって音が鳴ります。
繰り返しますが、
ピアノの音が鳴るのは、
ハンマーが弦を叩くから
であって、
指を鍵盤の底に打ちつけて
音を出すのではありません。
このことを本当に理解した時、
ピアノの音はどう鳴らすべきなのか、
どういうタッチが求められるのかわかるはずです。
ピアノの音が鳴る仕組みに適った弾き方をすれば、メカニックな問題の根本は解決します。
鍵盤を押し下げると指は鍵盤によって押し上げられる
もうひとつ大切なこと、それは、
鍵盤を指で押し下げると、
同じ力で指は鍵盤に押し返されます。
すなわち、作用・反作用の法則です。
鍵盤からの反作用を掌で受け止め活かす運動がピアノ演奏の鍵です。
弾ける人は、
作用・反作用を
上手く活用していて、
弾けない人は、
鍵盤を押し下げるだけで
独り相撲をしているから
弾けないのです。
タッチとは鍵盤に触れてダンパーとハンマーの動きをコントロールして奏でること
ピアノの演奏とは、
ピアノの鍵盤の深さ1cmの動きの中で
ダンパーとハンマーの動きをコントロールして
様々な響きを生み出し、
音楽を奏でることです。
鍵盤に触れて
作用・反作用をうまく活かし
ダンパーとハンマーの動きを
コントロールして奏でることが
タッチ
です。
音が出ない・・・
と言われるのも、
もっと歌って!
と言われるのも
メロディーと伴奏のバランスが悪いのも・・・
ハンマーの動きを
コントロールして
様々な響きを生み出す
《タッチ》になっていなくて、
ただ鍵盤を押し下げるだけ鳴る音は
「楽音」ではなく
「ノイズ」と同じ種類だからです。
キーの動きとハンマーの動きを感じるタッチの基礎練習
ピアノで歌うために、
表現豊かに演奏するために・・・
声楽家が発声練習をするように、
ピアノ弾きもタッチの基礎練習をしましょう。
タッチの基礎練習は約3分の極めて効果的な練習方法です。
エスケープメントレベルを〈A〉
鍵盤の底を〈B〉とします。
- 常に呼吸に伴う動きである事を忘れずに。。。
- 片手ずつ行います。左手から始めましょう。
(普段使わない左手から意識的に始めることで脳はより活性化します) - 左手の小指でC(ド)の鍵盤に触れます。
指は全身の一部であり、自分自身の一部です。指先だけを動かす意識ではなく、自分自身の全てが小指の動きに注がれるように意識を集中します。座るフォームを意識して!参照:上達は座り方から - ゆっくりと無音で鍵盤をAの位置まで押し下げ、それに伴うダンパーとハンマーの動きと鍵盤からの反作用を感じます。
音はかすかに鳴るかもしれませんが鳴っても鳴らなくても、鍵盤の動き・反作用とダンパーとハンマーの動きを感じることが大切です。 - Aの位置まで鍵盤を2回押し下げます。
- 3回目はゆっくりとBの位置(鍵盤を底まで)下げます。
エスケープメントレベルを通過する時の感触とハンマーの動きをよく感じます。ゆっくり押し下げると音は鳴りません(鳴らなくていいです)。
*鍵盤の底をめがけて指を降ろすのではなく、エスケープメントレベルを通過する瞬間に意識を集中します。
*鍵盤からの反作用を掌で受け止めます。
*鍵盤の底に指が着く時には全てが終わっています。くれぐれも鍵盤の底に指を押し付けることのないように。 - 鍵盤は指を離せば上がってくるようにできています。その上がってくるエネルギーで手が上がります。
- 3回目は音を奏でます。鍵盤とダンパーとハンマーの動きを感じながらハンマーが鍵盤のコントロールを外れる瞬間に集中して、シンプルに楽器本来の響きを生み出し、鍵盤が上がってくるエネルギー(反作用)を感じながら響きに耳を澄ましましょう(最低でも4拍)。
- 音が完全に消えるまで聴き続ける練習もおすすめします。ピアノの音が思いのほか長く鳴り続けることに驚くでしょう。
この練習を左手小指から
5⇒4⇒3⇒2⇒1
の順番で行い、
次に右手も同様に行います。
(右手はソ・ファ・ミ・レ・ド)
実際の練習風景です↓
なお、なぜ小指から行うかというと、
腕・手は、解剖学的に尺骨(しゃっこつ)、
すなわち小指側が軸になるからです。
軸になる小指のポジションを確認することで手は自然なポジションになります。
C dur(ハ長調)の「ド・レ・ミ・ファ・ソ」(右手はソ・ファ・ミ・レ・ド)
からはじめて、
翌日はc moll(ハ短調)、
その翌日は半音上げてDes dur(変ニ長調)、
その翌日はcis moll・・・
長調⇒短調で半音ずつあげて24調行います。
(24日で一巡したら、またC durから始めます)
タッチの基礎練習の効果
タッチの基礎練習の効果は演奏向上だけではありません。たとえば、
- はじめて弾くピアノにも対応できるようになります
- 緊張して手が震えても(何とか)弾けるようになります
解説します。
はじめて弾くピアノにも対応できるようになる
ピアノは自分の楽器を持って歩けないのでそこにある楽器を弾かなければなりません。
重かったり、軽かったり、
反応がよかったり、鈍かったり・・・
リハーサルがある場合はまだいいですが、コンクールのようにいきなり弾かなければならないケースも少なくありません。そのようなシチュエーションでも、結局はピアノのアクションを感じて何とか対応することにほかなりません。
タッチの基礎練習を日々続けることでピアノの鍵盤の動きやアクションを繊細に感じることができるようになり、その感覚が色んなピアノに対応できるスキルに通じていきます。
私は、リハーサルのない本番が本当に怖くて、数えきれないほど失敗しましたが、タッチの基礎練習をするようになってからは
何とかなる!
と思えるようになりましたし、実際よほどピアノに問題がない限り動揺する事はなくなりました。。
今では、どうしてあんなに怖かったのだろう???と思えるほど色んなピアノが平気になりました。
緊張して手が震えても(何とか)弾けるようになる
本番で緊張するのは人間の本能に由来しますが、演奏が破たんするほど手が震えることで悩む人もいます。
私も震えがひどくて本当に悩みました。もしも手が震えなかったら全く違う人生になっていたでしょう。それくらい震えでは悩みました。
でも、このタッチの基礎練習をはじめとするピアノ・ベーシック・トレーニングを日課にするようになって震えても何とか弾けるようになりました。
”震えたら弾けない”と思うから余計に緊張して震えます。
しかし、震えても何とか弾けると思えるようになったことで、悪循環を断ち切ることができ、震えても弾けると思えるようになったら、それほど震えなくなりました。
なぜ震えても何とか弾けるようになるかというと、
中心と軸からの腕・手・指で感じて動きを生みだす
からです。
習熟するには数か月以上を要します。しかし、そもそもピアノを弾く事自体がゴールのない旅のようなものです、それは巨匠達の演奏を聴けばわかりますし、彼らの言葉が表しています。どんなレベルであっても、根気よく続ければ必ず効果は表れます。
まとめ|ピアノの鍵盤に触れるのは指先ですが、ピアノは指先だけでは弾けません
では、まとめです。
タッチの基礎練習は、ただ指先だけをカリカリと動かすのではなく
全身と頭と心(感覚)、
すなわち自分自身の全てで
鍵盤とハンマーとダンパーの動きを感じ、
ピアノの音を奏でるとは
どういうことかを感じる練習です。
そして、
鍵盤を押し下げれば、鍵盤から返ってくるエネルギーがあります。
すなわち、
作用と反作用
ピアノ演奏の技術は
作用と反作用を巧みに利用する
と言っても過言ではありません。
ピアノは、”指が動けば弾ける”というものではありません。
指が鍵盤に触れることによって
ダンパーとハンマーの動きをコントロールし、
さまざまな響きを生み出し
音楽を奏でることです。
音が出ないのも、
速く弾けないのも、
自分の指にこだわるあまり、
ひとり相撲になっていて、
鍵盤の動きと
ダンパーとハンマーの動きを
感じていなくて、
そして、音も聴こえていないからです。
フィンガートレーニングや各種エクササイズも(人によっては)必要です。
ですが、まずは、
ピアノの音が鳴る仕組みを自分自身の全てで感じるためにタッチの基礎練習をしましょう。