ボディワーク|ピアノ・ベーシック・トレーニング

 

ピアノ・ベーシック・トレーニングは5つのボディワークで始めます。

  1. 自分初期化
  2. センタリングとコーディネート
  3. 背中から生える腕
  4. 背中から動かす指
  5. 座骨で座る

5つのボディワークは、ピアノ演奏・練習の質向上の第一歩として行います。

具体的な目的と効果は

  • 慌ただしい日常でささくれだった心を鎮める
  • 身体をピアノ演奏・練習モードに切り替える
  • ウォーミングアップで練習効果を上げる
  • 自分自身のコンディションを確認し整える
  • 心と頭と身体をチューニングすることで集中力を高める
  • ピアノを弾く心身の状態としての《センタリング》を習熟
  • 演奏する自分の身体として《コーディネート》感覚を育てる

さらに

本番前のルーティン

にもおすすめです。

概要を解説します。

♪この記事を書いた人
Yoko Ina

音楽&ピアノ、自然、読書とお茶時間をこよなく愛しています

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自分初期化|ボディワーク(1)

人間は、無意識のうちに色んなことを思ったり考えたりして、《自分》を見失いがちです。

ピアノモードのスイッチを入れるために、日常モードをオフにして、《自分》を初期化しましょう。

ボディワーク(1)は自分初期化です。

♪具体的な効果

  • 重心を下げる
  • 上半身をゆるめる
  • センタリング(中心から動く)

演奏モードへスイッチをOn!にしましょう。

以下、自分初期化のムーブメントの概要です。

《自分》に立ち返りましょう

日常の雑事や心のもやもやを息と一緒に吐きながら、まぁ~るく屈み、

種や木の実のイメージで、
《自分》に返りましょう。

自分の内面に意識を向け、
余分なものを振り払い、
《自分》という存在を感じ、
呼吸と心臓の鼓動を感じながら、

静かに、
穏やかに、
ゆらゆら揺れます。

重心を下げて上半身をぶらぶらにします

《自分》を十分に感じたら、
息を静かに吐き、
大きく吸って、
再び吐きながら下半身を立てます。

発芽のイメージです。

芽は、いきなり真っ直ぐは出てきません。

まず、ま~るくむっくり起きて、それから葉っぱが伸びていきます。

下半身を立てたら、
自然に呼吸しながら、
上半身をぶらぶら~。。。

ハムストリングスや背中・肩など全身を気持ちよ~くリラックス、伸びるに任せます。

センター(中心)から起き上がります

センタリング(いわゆる丹田)を意識して、
自然な呼吸によって
ゆっくり上体を起こします。

むっくりと葉っぱが伸びるイメージです。

中心から伸びて中心から呼吸します

真っ直ぐ立ち上がったら、3つのことを感じます。

  • センター(中心=丹田)から上下に伸びる身体
  • センターからの自然で穏やかな呼吸
  • 立つというバランス

新芽のイメージです。

柔らかな陽射しを浴びてすくすく伸び、大地に根を張っていくイメージです。

新鮮な空気が全身を満たし、
循環して呼吸が行われるのを感じ、
中心から身体を大きく広げましょう。

これからの練習、あるいは、演奏が充実したものとなるように、自分を初期化してピアノモードのスイッチをOn!にしましょう。

センタリング&コーディネート|ボディワーク(2)

ピアニストは鍵盤上のアスリートでもあります。

指は全身の一部なので〈指〉だけを動かそうとしても上手く行きません。

緊張すると指の動きが悪くなるのは、緊張によって身体が硬くなってしまうからです。

指の動きは、しなやかな身体から生まれます。

センタリング&コーディネート2種で全身と腕・手・指を感じ、しなやかさを習得しましょう。

上下方向のムーブメント

センタリング&コーディネート(1)は背中から腕への上下方向のムーブメントです。

椅子などに手を触れて、脚は肩幅に開き、上半身と下半身を直角にします。

静かに息を吐き、
ゆっくり大きく息を吸い、
再び吐きながら、
背中を伸ばします。

お腹が抜けないように、左右の肩甲骨のまん中辺りを意識して気持ちよく伸ばします。

腰を反り返してはいけません!

無理に腰を反らせると、
腰を痛めてしまいます!
注意してください!

背中を凹ませ十分に伸ばしたら、
息を吸いながらニュートラルな位置に戻し、
息を吐きながら背中を凸方向にしっかり伸ばします。

沢山反り返らせることよりも、呼吸と共に全身が波打つようなスムーズな動き感じることが大切です。

左右方向のムーブメント

センタリング&コーディネート(2)は背中から腕への左右方向のムーブメントです。

息を吐きながら、
上半身をゆっくりと横へスライドし、
体側が伸びるに任せます。

吸いながらニュートラルなポジションに戻します。

再び、息を吐きながら反対へスライドし、
体側が伸びるに任せます。

浜辺に寄せては返すさざ波のイメージです。

背中から生える腕|ボディワーク(3)

88鍵あるピアノの低音部から高音部まで幅広い音域を自在に操って演奏するためには

背中⇒肩周り⇒腕⇒指

の意識が不可欠です。

身体がカチコチにこわばっているのに指だけがしなやかに動くことはありませんよね。

カチコチの身体は肩こりや腰痛の原因、ひいては腱鞘炎などの障害を引き起こしやすくなります。

しなやかな身体のしなやかな腕、そして指を作りましょう。

以下、背中から生える腕のムーブメントです。

背中から生えた腕を10mくらいに感じる

足裏で床を感じ、身体の軸を意識して真っ直ぐ立ち、センタリングの意識で背中から腕を持ちあげ、10mくらい伸びていくイメージを持ちます。

指先が広がり10mくらいの大きなうちわになり、その大うちわで世界に風を起こすつもりで息を吐きながら腕を動かします。

身体の軸を意識し、
背中から指先までを大きく感じ、
ゆっくり動かすことで
腕を動かす筋肉や肩周りが
ストレッチされます。

いっぱいまで内側に入ったら、息を吸いながら、ゆっくりと反対へあおぐように、元の位置へ戻します。

肩周りからストレッチ

2往復したら、3回目は反対の手を添えてしっかり肩周りを中心にストレッチします。

沢山引っ張るよりも、ストレッチすべき部位を伸ばすことが大事です。

身体の軸を感じ、
全身を感じて
肩周りを中心にストレッチ。

肩が上がらないように注意しましょう。

片手ずつ、反対の腕も同じように行います。

背中から動く指|ボディワーク(4)

指が6本ある!と言われた”ピアノの魔術師”フランツ・リストは言いました。

指が5本ついている手が二つあると思うな。
身体から10本の指が生えていると思え。

背中から指が動く感覚を体得しましょう。

背中から動く指の感覚に習熟すると

  • ダイナミックで多彩な表現が可能になる
  • 力まず楽に豊かな響きを生み出すことができる
  • より大きな筋肉を使うので効率的で疲れにくい
  • 本番での緊張をエネルギーに変えることができる
  • 緊張で指が震えた時にも大きく崩れにくくなる

など表現豊かな演奏のために必須です。

以下、背中から動く指のムーブメント概要です。

白鳥の翼のように背中から腕を広げる

常に呼吸に伴う動きとして、白鳥が翼を広げる様子をイメージで、”背中”から腕を広げましょう。

動きは背中から始まり、二の腕⇒前腕⇒指と動きます。

肩の高さくらいまで腕が上がったら、背中の力を抜きます。腕を持ちあげるのをやめるので二の腕⇒前腕、そして最後に指が落ちます。

背中で腕を持ちあげる
持ち上げることをやめるから
腕が落ちる・・・

その繰り返しで背中から動く指を感じましょう。

必見!バレエ「瀕死の白鳥」

クラシックバレエの「瀕死の白鳥」の腕の動きがとても参考になりますので、ぜひご覧ください。

素晴らしい踊りは沢山ありますが、振付として”背中からの腕の動き”がわかりやすいマイヤ・プリセツカヤをご紹介します。

腕はもちろん、指先まで神経が行き届いた繊細の動きが、背中(身体の中心)から生まれているのがわかりますね。滑らかな動きは本当に驚くばかりです。

背中から動く指のムーブメントに習熟すると、自分の”指”に対する認識が変わり、動きが変わり、響きも変わります。

練習前だけでなく、休憩の時にも積極的に行えば、疲労回復にも効果があります。

本番前の緊張で身体が硬くなりがちな時にも効果絶大です!

座骨で座る|ボディワーク(5)

ピアノは椅子に座って弾きますが・・・

カフェの椅子に座るのと、ピアノを弾くために座るのとは全く違います。

ピアノ演奏において〈座る〉は、演奏フォームです。

ミスタッチが多い、
速い動きが苦手、
跳躍が上手くいかない・・・

などの悩みの原因は指がどーのというより、

そもそも「全身のバランス」や使い方が悪いケースがほとんどです。

《座る》は、

  • 全身のバランス
  • 安定したテクニック

の基礎です。

ピアノを弾く演奏フォームとしての「座る」ポイントは3点です。

  1. 足が床に吸い付くように安定している
  2. 膝が足先と同じ方向を向いている(膝は離れている)
  3. 座骨の上で上体がバランスをとっている

詳しくは 《ピアノ演奏フォームとしての座り方3つのポイント》

ピアノ演奏は座り方から|演奏フォームとしての座り方3つのポイント
ピアノは椅子に座って弾きます。 つまり・・・ ピアノ弾きにとって、ピアノの椅子に座る姿勢は演奏フォームです! スポーツ選手がフォームを変えたら成績が上がったというニュースがしばしば流れますが・・・ ピアノ弾きも、椅子に座るという演奏フォーム...

以下、座骨で座るムーブメントの概要です。

足裏で床を座骨で椅子を感じる

座る基本はまず足裏と座骨です。

  • 足裏で床を感じる
    あたかも磁石で吸い付いているように
  • 座骨で椅子の座面を感じる
    その上に上体がすっと伸びていく

座骨の上で上体がバランスをとると、自然にお腹(丹田)に力が入ります。
お腹に力を「入れる」のではありません。力が自然に集まります。

お腹に力があると、首や肩が楽になります。

いわば、「脱力」。

脱力は、使うべき筋肉を使って、バランスが取れていれば、必然として実現されます。

座骨の丸みを感じて揺れる

足裏で床を感じ、座骨で座面を感じ、上体がすっと上に伸びたら、

息を吐きながら、
座骨の丸みに沿って後ろへ重心を移動します。

慣れないとガクっと倒れたり、カクカク動いたりします。
ゆっくりスムーズに動くには注意深くコントロールしなければならないことがわかります。

バランスをとるってどういうことか体感できますよ。

後傾したら、息を吸いながらニュートラルな位置へ戻し、

息を吐きながら、前へ移動します。

座骨の丸みに沿ったわずかな動きで、
前傾すると腰や背中の筋肉がどうなるか体感できます。

後傾と前傾を繰りかえし、あたかもゆり椅子がゆらゆら揺れる動きを楽しんでください。

座骨で座るムーブメントは、

安定した演奏のために不可欠な演奏フォームを洗練させることに役立ちます。

本番前のルーティンとしても必須です。

たった3分でピアノモードへ|5つのボディワークまとめ

以上、ピアノ・ベーシック・トレーニングの5つのボディワーク概要をご紹介しました。

♪5つのボディワーク

  1. 自分初期化
  2. センタリング&コーディネート
  3. 背中から生える腕
  4. 背中から動く指
  5. 座骨で座る

です。

5つのボディワークの目的と効果は

  • 慌ただしい日常でささくれだった心を鎮める
  • 身体をピアノ演奏・練習モードに切り替える
  • ウォーミングアップで練習効果を上げる
  • 自分自身のコンディションを確認し整える
  • 心と頭と身体をチューニングすることで集中力を高める
  • ピアノを弾く心身の状態としての《センタリング》を習熟
  • 演奏する自分の身体として《コーディネート》感覚を育てる
  •  

さらに

本番前のルーティン

としても効果的です。

5つのボディワークは丁寧にやっても10~15分です。

ぜひ毎日の練習メニューに取り入れてください。

⇒ 次は指のストレッチです。

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