どの国際コンクールの配信を聴いていても思うのですが、1次予選の緊張って独特ですね。
せめて1次は通りたい!
が参加者の本音だと思います。
そんな1次を通過しての2次は色んな意味でその人らしさが表れますね。ショパンコンクールの場合、2次予選のプログラムが最も自由度が高く、そこも楽しみです。。。
素朴に感じるコンクール参加者3つのタイプ
2次では参加者のコンクールに対する姿勢がより明らかになって、素朴に3つのタイプあるにように感じました(勝手に感じているだけです、念のため)。
- ワルシャワのステージでショパンを弾けて幸せ♪
- 自分の演奏をするのみ!
- ショパンコンクールで優勝するのは自分だ!!
解説すると・・・
1. ワルシャワのステージでショパンを弾けて幸せ♪
~演奏後のインタビューでもよく聞かれるフレーズです。ショパンが好きなら聖地ワルシャワで弾きたいのはもっともです。。。
2.自分の演奏をするのみ!
~当たり前と言えば当たり前ですが、こういう場でぜひとも披露したい自分の世界があればこそというのが前提で、ただ一生懸命練習して弾いていますレベルではないです。聴いていてとても楽しいし幸せになります。
3. ショパンコンクールで優勝するのは自分だ!!
~”ショパンコンクール優勝者の十字架を一生背負う覚悟”と言い換えることもできますが、つまりショパンコンクール優勝者のレッテルとともに生き将来はマエストロと呼ばれるにふさわしい音楽家になる決意です。その決意や覚悟がある参加者の演奏にはやはり気迫や貫禄を感じます。
どれがいい、悪いではなく、ただ感じるだけの話ですが、やはりマインドとか姿勢は大事だなと思います。
2次予選お気に入り備忘録
ということでお気に入り備忘録です。
そのステージの出来不出来はあまり気にしていないので、ミスが多かった人もいます。その人の音楽が私に特別な”何か”をもたらしてくれたかどうかだけです。
EVREN OZEL
EVREN OZEL (United States)。1次の記憶はないのですが、2次はのびのびしていて楽しみました。飄々としていてとても好きです。このステージでこういう自然体の演奏が出来るのは素晴らしいです!
牛田智大
牛田智大くんは1次も凄かったけれど、2次も圧巻でした。彼はワルシャワのステージでショパンを弾けて幸せ!というレベルではなく、ショパンコンクール優勝者の十字架を背負う覚悟を感じました。
Twitter見ていたら、演奏後の拍手が微妙で不満な方が多そうでしたが、こういうことだと私は感じました↓
ワルシャワの聴衆の動揺が伝わるような拍手。ポーランドの参加者、今回はブレハッチ以来の優勝をもたらしてくれそうな人が複数いそうだけれど牛田くんが脅威になりそうで、しかし、彼を認めざるをないという複雑な心理が拍手に表れて面白い。。。
私には珍しくバズって嬉しい。。。
PIOTR ALEXEWICZ
PIOTR ALEXEWICZはポーランド国民の期待を背負っていると思いますがプレッシャーに動揺することなく(少なくともそう聴こえた)1次に続き圧巻でした。
彼もショパンコンクール優勝者の十字架を背負う覚悟十分ですね。
最初のポロネーズから鳥肌。おとなしそうだけれど芯の強さとか底力は凄いと思います。二次のステージに全力ぶつける人が多い中で、まだまだ余力十分でファイナルまで見据えてエネルギー配分しているように聴こえます。3次のソナタが楽しみです。。。
ALBERTO FERRO
ALBERTO FERROさんは1次よりも良さが出て安心して聴いていました。
左手薬指に指輪が光っているけれど、やっぱり愛は偉大だと思います。10代の参加者が何かと話題になりますが、彼の参加には家族の存在があることでしょう。
ショパンの作品だって祖国ポーランドとそこに暮らす家族、友人への愛あればこそ生まれたもの!
フェロの愛あふれる演奏で胸がいっぱいになりました。
MARTÍN GARCÍA GARCÍA
MARTÍN GARCÍA GARCÍAさんは選曲も曲順も納得です。これ凄く大事ですよね。
なぜこの曲を弾くのか?
なぜこの順番なのか?
聴いていて「???・・・」なのは問題だと思います。
ガルシア・ガルシアさんの演奏は愛があふれていてとにかく幸せになれます。バラード3番って意外にいい演奏が少ないと思うのですが、これくらい朗々と語るのか~とても参考になります。控え目に言って大好き過ぎて、率直に言って恋におちました。
スケルツォ2番は”たまには雨の日もあるさ!くらいに陽気。とにかく楽しい!2ページ目からのDurになるところは個人的に大空を舞っているようだと思っているんだけどまさに理想!勝手に「なかーま!」の気分。
そして驚いたのは英雄ポロネーズ!まるでアカペラ!三度の装飾音も中間部の左手の連続オクターブも人の声が聴こえます!凄いぞ~!!!
しかしベストがきつそうなのが結構気になりますね、今にもプチって行きそうで気が気じゃないです(笑)
ADAM KAŁDUŃSKI
(ここからは配信を聴きながら書き、リンクは後で追記しています)
ADAM KAŁDUŃSKIは1次から注目しています。ミステリアスな雰囲気のキャラ、かなり神経質で繊細な感じ、ふっと消え入りそうなはかない美しさが至るところにあって心奪われます。ちょっと調子が悪かったかもしれませんが、しかし、持っている音楽の素晴らしさは十分に伝わり心打たれました。
NIKOLAY KHOZYAINOV
NIKOLAY KHOZYAINOVは圧巻でした。最初の英雄ポロネーズはよくある「イケイケ!」「ノリノリ」ではなくフレージング・アーティキュレーションがとても丁寧で厳かにはじまり、ワルツとバラード2番に続いて演奏機会の少ないフーガやマズルカ f-moll [op. 68 nr 4]を入れて、舟歌はもう完全にゾーン状態!聴いている私はトランスポーテ―ションしていました。
MATEUSZ KRZYŻOWSKI
MATEUSZ KRZYŻOWSKIは1次の印象がないですが、2次は洗練されていてとてもお洒落でした。ここでこういう演奏を聴かせられるのは素晴らしいです!エチュードOp.10-6からの英雄ポロネーズというプログラムも粋。
脱皮した感じの、しなやかで、のびやかで、輝かしい、まさに”英雄”ポロネーズに鳥肌がです!
結果は審査員が決めること!私はいい演奏に感謝するだけ
さて、結果が発表になり激震が起こりました。
私としては、牛田智大くんが通過できなかったのと同じくらい、イタリアのA.フェロがいないのが驚きでした。これが10年前なら怒りぶちまけていたでしょうが、少しは大人になって、心穏やかにTwitterのタイムラインを眺めていました。
コンクールの結果が想定外なのは今に始まったことではありません。納得の結果なんて2005年ラファウ・ブレハッチが優勝したショパンコンクールくらいです。あとは、ホントにどのコンクールのどのステージも「はぁ?!」「ウソでしょ!」「ご冗談を!」と絶句し続けた末に学習し、コンクールってそういうものと達観しています。
何より、ホントに素晴らしいピアニストは、コンクールの結果に関係なく、成長し活躍していることがわかってきたので、結果に大きく心乱されることはありません(逆によい結果でもそれが最高だった人も沢山いる)。
結果は、審査員が決めること。
私は、素晴らしいショパンを聴かせてくれた参加者のみなさんに心から感謝するだけです。。。