ウィリアム・ヘイゲン ヴァイオリンリサイタルを聴きました。
昨年2015年 エリザベート王妃国際音楽コンクールヴァイオリン部門で3位に入賞したアメリカ ユタ州出身23歳のヴァイオリニストです。
イツァーク・パールマンの愛弟子!?
ヘイゲンを聴きたいと思ったのは、プロフィールのこのフレーズでした。
イツァーク・パールマンの愛弟子
イツァーク・パールマンは1945年イスラエル出身、4歳の時に患った小児マヒの後遺症で足が不自由ながら、物凄い技巧と抒情性、そして、底抜けに明るい音楽で人々を魅了しています。
何を隠そう、若いころの私にとってパールマンは神でした。
いや、私だけじゃないでしょう(笑)
とにかく、楽しそうに、いとも簡単に、軽々と超難曲を演奏する姿はまさに神業!
こんな逸話を読んだことがあります。
NHK交響楽団とあるコンチェルトのリハーサルをしている時、オーケストラのヴァイオリンのメンバーがある難しいフレーズで苦労しているのを見たパールマンはこう言ったそうな・・・
私は足が不自由ですが、皆さんは手が不自由なようですね。。。
N響のメンバー苦笑するしかない・・・笑
ふつー、そんな事、冗談でも言えないでしょうが、パールマンなら言うことも赦され、パールマンに言われたら笑うしかない・・・
パールマンはそんな物凄いヴァイオリニストです。
このウィリアム・ヘイゲンはその弟子だというのですから、これは聴かなければ!と行って参りました。
明るい!純粋!ヘイゲンは天使のようだった
さて、ヘイゲンは、ニコニコと楽しそうにステージに現れ、1曲目のモーツァルト ヴァイオリン・ソナタト長調 K.310を飄々と弾き始めました。
天真爛漫な明るさに満ちたこの作品は、ヘイゲンにぴったり!
純粋さ、無邪気さ、まるで天使が舞い降りたようにあたりが明るく温かくなる心地よさ。
ヴァイオリニストって眉間に皺寄せて、人類の苦悩を一身に背負っているかのように苦しそうに弾くタイプが少なくないのですが、師匠のパールマンに負けず劣らず、ヘイゲンも幸せそうに弾きます。
どこにも力みのない柔らかな響き、作為のない自然な音楽・・・
これは凄いぞ!!
いい人すぎて皮肉はわからない?!
さて、2曲目は、プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 Op.94bis。
この作品は元々、フルートのために書かれたのですが、ヴァイオリニストにとっても重要なレパートリーです。私、個人的には、ヴァイオリンで演奏される方が好きだったりします。。。
技巧も安定しているし、いいんですけど・・・、
プロコフィエフって皮肉屋なんですよね。
その皮肉が、天使ヘイゲンにはひょっとして今ひとつピンと来ていないのではないかと思ったりしました。
ピアノとの解釈の違いもあったかも・・・
う~ん・・・プロコフィエフって「いい人」には難しいのかもね。。。
などと感じながら、聴いていましたが、曲が進むにつれ良くなり、4楽章の途中辺りから、全開になり、最後は熱くしてくれました。
ヘイゲンは、ゆったりした雰囲気や、飄々としたところが魅力で、頑張って結果を出すというより、ゆっくり育つ大器晩成かも、と思ったりしました。
「悪魔も微笑む」愛されキャラ
休憩後は、タルティーニの『悪魔のトリル 』
この曲、タルティーニが夢の中で、悪魔に魂と引き換えに臨むものを手に入れるという契約を結び、悪魔にヴァイオリンを渡したところ、素晴らしいソナタを演奏した。目覚めたタルティーニはそれをすぐさま再現しようと演奏して生まれた、ということになっています。
タイトルの通り、「トリル」という、隣り合ったふたつの音を速いテンポで震わすように演奏する技巧に特徴のある、非常に難しい曲です。
・・・が、師匠のパールマン同様、ヘイゲンもニコニコと笑みさえたたえながら、いとも軽々と弾いてのけました。
悪魔に魂渡さなくても、悪魔も微笑んで何でも望みをかなえてくれそうな愛されキャラですね。
聴いていて心底に幸せな気分になる、稀有な演奏家です。
聴く人を幸せにしてくれる
最後はラヴェルの『ツィガーヌ 』。
ドラマティックな作品ですが、ヘイゲンが弾くと明るい!、大らか!
情熱的というより、包み込まれるような温かさで人を幸せにする演奏です。
これは、貴重なキャラですよ。
上手い人はいっぱいいるけど、聴いていて幸せにしてくれる演奏家はそんなに沢山いません。
ヘイゲンは、間違いなく聴く人を幸せにする演奏家です。
最後は、パラディス『シチリアーノ』を朗々と奏で、穏やかな空気で会場を満たして演奏会は終わりました。
また、聴きたい演奏家です。
こちらの公式サイトから、Youtubeで演奏が聴けます。
どれもとてもいいです。
ウィリアム・ヘイゲン 公式サイト
プログラム|ウイリアム・ヘイゲン ヴァイオリンリサイタル
ウイリアム・ヘイゲン ヴァイオリンリサイタル
ヴァイオリン :ウィリアム・ヘイゲン
ピアノ:岡田将
☆プログラム ☆
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.310
プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 Op.94bis
<休憩>
タルティーニ:悪魔のトリル
ラヴェル:ツィガーヌ
☆アンコール☆
パラディス:シチリアーノ
2016年2月29日 19時開演 武蔵野市民文化会館小ホール