ピアノ演奏の上達に練習は欠かせません。
練習方法をよく考え、工夫する事は大切です。それは上達のためであるとともに、誤った練習によって故障のリスクがあるからです。
鞘炎、肘部管症候群などのように痛みを伴うもの、また痛みはないけれど思うように指が動かなくなるフォーカル・ジストニアなど様々ありますが、いずれも、ピアノ弾きの手の故障は
ミスユース×オーバーユース
によって起こります。

無茶な練習や弾き方は、早晩故障を招きます。
練習が音楽的自殺行為にならないように、ピアノ弾きの故障予防【練習編】です。
練習以前の心得はこちら↓

ウォーミングアップは一石二鳥
限られた時間で沢山の曲を練習しなければならない・・・
ピアノの前に座ったら、目の前に迫っている曲から練習したい気持ちはわかりますが、それでも、なお、やはり、
ウォーミングアップをしましょう!
ウォーミングアップには、
日々の練習効果を上げるため
本番前のルーティンとしての有用性
のふたつのメリットがあります。すなわち、一石二鳥!
【メリットその1】
ウォーミングアップによって身体を温めることで筋や腱が柔らかくなると関節可動域が大きくなります。手が冷たい状態よりも温かい方が楽に指が動くのはそのためです。
ウォーミングアップで身体の状態をよくすることは、練習効果を上げることでもあります。
ピアノを弾くのは全身運動です。
【メリットその2】
普段から決まったウォーミングアップをしていれば、それが本番のパフォーマンスを高めるための最強の《儀式》になります。すなわち
ルーティン
普段からルーティンとしてウォーミングアップメニューを行っていれば、緊張する場面でそのウォーミングアップを行うことで ”平常心”へと持っていくことができます。

基礎練習はピアノと自分の最適化
スケール・アルペジョなどの練習はしなくてよい、曲の中で難しいフレーズが出てきたらそこで練習すればよいという意見がある事は承知しています。
しかし、やはり、基礎練習は有効です。
ジョルジュ・シャンドール、マリア・タリアフェッロ、メナヘム・プレスナー・・・高齢になっても第一線で素晴らしい演奏を披露し続けた巨匠達が書いた奏法の本には、必ず基礎テクニックの項があります。彼らが勧めているという事はそれだけ重要だという事。
基礎練習はピアノと自分の最適化
です。
ピアノと自分の関係がより良好ならば、楽曲の練習は、より音楽的な内容に時間とエネルギーを注ぐことができます。
基礎練習しましょう!
フォームとタッチは中心感覚から
ピアノは椅子に座って弾きますが・・・
座るという誰でもできる簡単な行為であるがゆえに、無頓着になりがちです。
ピアノ演奏において、座るというのは演奏フォームです

中心感覚でのフォームとタッチを洗練させましょう。
足を忘れるなかれ
ピアノはひとりアンサンブルですから、とにかく沢山の音を演奏しなければなりません。
とかく指に意識が集中しがちですが・・・
足を忘れてはいけません!
ピアノの前に座ったら、条件反射的に右足(or両足)をペダルに乗せる方が少なくありませんが、実は身体に余計な負担をかけています。
試しに、机やテーブルに向かって座っている時に、ペダルへ足を乗せるようにつま先を持ち上げて、その状態をキープしてみてください。結構疲れます。無駄なエネルギーを使う必要がないばかりか、身体への負担は腰痛や背中・肩・首の痛みにつながり、ひいては手指へも悪影響が及びます。
ペダルを踏む必要のない基礎練習や部分練習などの時にはペダルから足を離しましょう。
心が動かなければ指は動かない
指が動かなければピアノは弾けませんが・・・
指は心が動かなければ動きません!
人間という生き物は、心が動くから身体が動くのです。仕事で疲れていても、楽しい事なら喜々と出かけられるのがその最たる例です。
したがって、心揺さぶられる体験を沢山しましょう。
いい作品や演奏に沢山接し、いつも弾きたくてたまらない状態にいれば練習も楽しく、はかどります。
素晴らしい作品というのは、細部に至るまで素晴らしいです。片手の部分練習こそ、細部の素晴らしさに対する感動を持って
美しすぎて、弾かずにいられない、だから弾く、練習する・・・
というモードで練習しましょう。
暗譜は寝て待て
睡眠と記憶の関係は科学的に証明されています。
すなわち、夜更かしや睡眠不足は暗譜の敵!
暗譜が心配で眠れない・・・というのは逆で、
暗譜はよく眠ってこそ!です。
大切な本番ほど得意を活かす選曲を
練習は、不可能を可能にする奇跡を起こしてくれます。
しかし、手に余る難曲を気合で本番に乗せようとするのは無謀です。特に試験やコンクールのようにプレッシャーの大きい本番での無謀なチャレンジは自殺行為です。心身に大きな負担となり故障のリスクが高まり、よい結果も望めません。
大切な本番は得意を生かしましょう!
苦手克服は慎重に。
私は、どんな曲でも、無理と決めつけず、本当に弾きたいなら弾けばよいと思っていますが、しかし、取り組み方は慎重であるべきです。難しい曲は、何が難しいのか分解して、可能なレベルから時間をかけてトレーニングをして仕上げていきましょう。気合と根性で必死の形相で取り組んでも早晩手が痛くなり故障への道をまっしぐらです。
また、選曲はスケジュールとの兼ね合いも考慮しましょう。何でもすぐに弾ける実力と自信のある方は別として、凡人の自覚があるなら自分に大きな負担をかけるようなタイトなスケジュールは避けましょう。
人生は短いようで長いです。
自分を大切にしましょう。
本番対策を練習量だけに頼るなかれ
練習するのは演奏するためであり、
演奏とは、聴衆と音楽を分かち合う事です。
演奏するのはピアノ弾きとして大きな喜びのはずですが・・・
本番前には色々と不安になるもの・・・
不安や恐怖、プレッシャーに駆り立てられ、時間のある限りピアノにしがみつくような練習によって、オーバーユースで故障して本番を迎えられなくなってしまったら、一体何のための練習なのでしょうか。
本番対策は、練習量だけに頼るのではなく
を駆使してベストの状態へ持って行きましょう。



まとめ|ピアノ弾きの故障予防8ヶ条【練習編】
ピアノ弾きの故障予防8ヶ条をまとめましょう。
- ウォーミングアップは一石二鳥
- 基礎練習はピアノと自分の最適化
- フォームとタッチは中心感覚から
- ペダルを使わない練習は足をペダルから外す
- 心が動かなければ指は動かない
- 暗譜は寝て待て
- 大切な本番ほど賢明な選曲を
- 本番対策を練習量だけに頼るなかれ
練習はすればよいというものではありません。
練習方法を間違えれば、練習しても弾けるようにならないし、悪い癖がつくかもしれないし、故障してしまうかもしれません。
練習には故障のリスクがあることを理解し、適切な練習で、ピアノライフをEnjoyしましょう。
練習以前の心得はこちら↓
