GW恒例となったクラシック音楽イベントラ・フォル・ジュルネ。
今年2018年は例年の有楽町国際フォーラムに加えて、池袋の東京芸術劇場でも開催ということで、5/3の初日に興味津々で行って参りました。
・・・で、どうだったかと言うと、興行的には微妙な気がしますが、音楽の力と演奏家の存在意義を改めて感じた不思議な一日でした。
レポします。
ラ・フォル・ジュルネTOKYO2018のテーマはモンド・ヌーヴォー
ラ・フォル・ジュルネは毎年テーマがありますが、今年は
”モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ”
亡命や放浪など異国への移住や旅をテーマに作曲家や作品でプログラムが組まれています。
いつの時代も旅は音楽家に多くの刺激をもたらし、その地の音楽に触れることでインスピレーションを与えてきました。
20世紀のふたつの世界大戦で亡命を余儀なくされた音楽家や、プロコフィエフのように亡命したものの帰国した作曲家、ショパンのようにパリへ旅立って二度と祖国ポーランドへ帰ることのなかった作曲家etc、旅と亡命や放浪がテーマになっています。
詳しくはこちらをどうぞ。。。
会場へ着いての第一感は”二か所で開催する意味あるのか?”
テーマ以上に関心が高いのが、今年は会場が二か所になることでした。
例年の国際フォーラムに加えて、池袋の芸劇こと東京芸術劇場でも開催されます。
ここも有楽町の国際フォーラム同様に池袋駅から地下直結、雨でも傘なしで行けます。
芸劇前の広場では野外ステージが設けられ、ライブが始まろうとしていました。
屋台も出ているのですが、国際フォーラムの地上広場とは全く違う空気が流れていまして・・・
会場に到着した第一感は、
何で池袋の芸劇と有楽町の国際フォーラムの二か所で開催する意味あるのか、う~ん、微妙・・・
逃げるようにそそくさとホールへ。。。
芸劇での開催は興行的には微妙・・・
私は、5/3(木・祝)14時からコンサートホール”ブレヒト”でのプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番をお目当てに行きました。
国際フォーラムでの会場スタッフはアルバイトなのかボランティアなのか・・・クラシック音楽のコンサートに来ているというより、体育会系イベントのノリで、それも”お祭り”だから愛嬌ね~と笑って許す感じですが、芸劇のコンサートホールは普段のちゃんと制服着たスタッフが対応しています。
ここに来ても、芸劇での開催は興行的に微妙だという感を強めました。。。
それでも音楽は素晴らしく、エル=バシャは偉大だった
微妙な気分でコンサートホールに入ると、お決まりのラ・フォル・ジュルネオフィシャルグッズや出演アーティストのCD販売、そして、なぜかTカードのキャンペーン・・・
何かと騒がしいロビーをくぐり抜け、席へ着きました。
今日の公演は、2曲で50分ほど。
- チャイコフスキー:イタリア奇想曲
- プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番
チャイコフスキーのイタリア奇想曲も、ひそかに楽しみにしていたのですが、冒頭の金管楽器がなんか気の抜けた炭酸水のようにしまらず、続く木管楽器もボソボソしているし、弦楽器もぼやっとしていて・・・
ひょっとして今朝来日したのか?
長旅と時差ボケか?
それとも指揮者に超不満?
まあね、オケのメンバーも人間ですし、色々あるんですよね・・・と想定内。
お目当てのアブデル・ラーマン・エル=バシャを待ちました。
・・・で、落ち着いた足取りで燕尾服姿のエル=バシャが登場し、さっと座るとひと呼吸おいて指揮者とアイコンタクト、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番が始まりました。
凄いソリストって、三流オケを1.5流くらいに押し上げてしまうのです。
今までにも、何度もそういうマジックに遭遇しました。
果たして、エル=バシャもそうでした。
この曲は冒頭がクラリネットのソロで始まりますが、さっきと別人。
ダメンズがスーパーマンに変身したくらいのパリっとした演奏です。
弦楽器の響きも充実度3倍増し!
なんだなんだ、君たち出来るじゃないか!
とテンション高まる中、エル=バシャのソロが入ると・・・震えました。
ホントに久々に震えた。
なぜ震えたかって、それは本物の力です。
エル=バシャの何が凄いって、奇をてらったり、頑張ったり、妙に作ったりするところが微塵もなく、ただただ音楽に献身して淡々と演奏するという当たり前ながらなかなかできないことを涼しい顔で事もなげにやってのけるのです。
プロコフィエフの3番のような曲で激することなくその姿勢を貫くのは並大抵ではありません。その自制心というかストイックな姿勢が物凄い迫力となって心の琴線を震わせ、身体も震え、鳥肌も立ちます。
いや~、正直涙腺も緩みました。
これこそ音楽の力、演奏家という仕事の存在意義です。
会場には、プロコフィエフが誰なのか、エル=バシャの凄い経歴を知らない人もたくさんいたことでしょう。
途中、わずかですが子供の声が聞こえたりもしていました。
でも、ホントに凄いものはわかるのです。
演奏が終わると嵐のような拍手は鳴り止まず、誰ひとり席を立つことなくカーテンコール4回。
最後はオケのメンバーがお開き体制に入り、強制終了しました。。。
優れた芸術はちっぽけな自我から自分を抜け出させてくれる
実は、帰ったらもう練習したくないだろうからと朝1時間ほどピアノを弾いてから出掛けたのです。
でも、エル=バシャを聴いたら、居ても立っても居られないほど弾きたくなって芸劇から直帰!
また練習しましたよ。
ふつー、出掛けたら疲れるじゃないですか。
でも、エル=バシャを聴いたら充電120%な気分で出掛ける前よりも元気になって、集中度も五割増し!(当社比)
私は子供の頃からずっと音楽が好きで、音楽のない生活なんてありえないと思っています。
でも、それでも、今日は、音楽の持つ凄い威力を改めて思い知りしました。
優れた芸術は、ちっぽけな自我から自分を抜け出させてくれます。
それは、作曲家も演奏家も、自分の限界を超え続けているからだと思うのです。
そして、やはり、生きている限り成長していくのが”生きている”ということで、その精神の糧になるのが芸術です。
それも、添加物だらけのまがい物のような食品が身体にとってよくないように、芸術も本物に触れなければなりません。
そういう意味で、広く一般向けのクラシックイベントでありながら、決してレベルを妥協することなく一流の本物の演奏を提供するラ・フォル・ジュルネは素晴らしいイベントです。
クラオタ(クラシックオタク)の多くからは、ラ・フォル・ジュルネを評価しない声が聞かれます。
それは、自分たちの欲求を100%満たしてくれないからであって、クラシック音楽界全体を見たらとてつもないイノベーションです。
こういうイベントを低く見るその姿勢がクラシックの敷居を不当に高くして、本来もっとクラシック音楽に親しめるはずの潜在的クラシックファンを排除しています。
そして、どんなアート・クリエイトも裾野を広げたいならラ・フォル・ジュルネに出かけてそこで何が起こっていて、なぜこんなに人が集まるのか自分の目で見て考えてみることを強く勧めます。
きっとあなたの世界にもイノベーションが起こせるはずです。
普段クラシックのコンサートに行かないけれど、カフェならクラシックが流れているようなところがいいというあなた、GWにはラ・フォル・ジュルネに行ってみましょう。。。
普段行かないところに行くというだけでも、旅であり、冒険です。
勇気ある人に世界は優しいです。。。
ラ・フォル・ジュルネTOKYO2018 情報
では、ラ・フォル・ジュルネTOKYO2018情報です。
【名称】ラ・フォル・ジュルネTOKYO2018
【日程】2018年5月3日(木・祝)~5日(土・祝)
【場所】会場は二か所です。
東京国際フォーラム(丸の内エリアの中心会場)
東京都千代田区丸の内3丁目5番1号
TEL. 03-5221-9000
東京芸術劇場(池袋エリアの中心会場)
東京都豊島区西池袋1-8-1
TEL. 03-5391-2111
詳しくは公式サイトをご覧ください。