第3回SHIGERU KAWAI国際ピアノコンクールファイナルを聴きました

昨年の第2回SHIGERU KAWAI国際ピアノコンクールファイナルでの

ピサレフとネルセシヤンの、
ピアノってひとりオーケストラ!!

を聴きたくて、今年も猛暑の上野へ出掛けました。

♪この記事を書いた人
Yoko Ina

音楽&ピアノ、自然、読書とお茶時間をこよなく愛しています

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第3回SHIGERUKAWAI国際ピアノコンクールファイナルプログラム

今年の第3回は18の国と地域より234名の申込みがあり、2月~3月にかけて国内及び海外の予備審査が実施され、57名が一次予選に参加しました。

セミファイナルを通過した6人によるファイナルのプログラムは次の通り。(カッコ内は共演ピアニスト)

~♪~

  • ポリーナ サスコ (ウクライナ)
    ラヴェル / ピアノ協奏曲 ト長調 (ネルセシヤン)
  • 丸山 凪乃 (日本)
    リスト / ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調(ピサレフ)

<休憩>

  • ハリソン ハーマン(オーストラリア)
    プロコフィエフ / ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 Op.26(ネルセシヤン)
  • 池邊 啓一郎
    ラフマニノフ / ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18(ピサレフ)

<休憩>

  • イリヤ シュムクレル (ロシア)
    プロコフィエフ / ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 Op.26(ネルセシヤン)
  • 荒石 果穂 (日本)
    モーツァルト / ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466(ピサレフ)

~♪~

・・・どーでもいいんですけれど、ネルセシヤンは昨年もプロコフィエフの3番とラヴェルを弾いていたことを思い出しました。。。

ピアノってノーアイディアで鍵盤押し下げるとノイズしか鳴らないと思った

このコンクールの最大の特色は、ファイナルのコンチェルトがオーケストラ共演ではなく

2台ピアノ

であることです。

共演ピアニストは、毎年夏開催されているロシアンピアノスクールで講師を務めているネルセシヤンとピサレフなんですが・・・

これ、ある意味、残酷なんですよね。。。

お2人ともモスクワ音楽院教授にして素晴らしいピアニスト。
音楽のスケールが大きくて、かつ繊細だし、響きが豊かだし・・・

正直なところ、ついついソリストではなく、オケパートに耳を奪われている自分がいるわけです。

そして、思いました。

ピアノってノーアイディアで鍵盤を押し下げると、ノイズしか鳴らないのだな~・・・

ネルセシヤンとピサレフは、音の意味をすべて説明し尽せるかのように、筋が通っていて、神経細やかで、どんなにffでも、決して叩くことなく柔らかく豊かに鳴らしています。

ピアノで音楽を奏でるってこういうことなんだな~と教えてくれます。

もちろん、ソリストに合わせて、かつ引き立てるように弾いているのですが、(当たり前ですけれど)やっぱり違うんですよね~。

”自分を知る”ことの大切さ

もうひとつ思ったのは、”自分を知る”ことの大切さです。

コンクールの選曲は課題の中で自由です。

好きな曲、弾きたい曲を弾けばいいんですけれど、聴いている身としては、やっぱり楽しみたいという気持ちがあるので、非公開で関係者しかいないようなオーディションならともかく、聴衆が沢山いるコンサート形式の場なら、やはり弾くのに必死なだけの演奏はどうかな~と思いました。

”自分を知る”というのは、キャラもですし、身体条件も大事な要素です。

大きな手の人なら問題なくても、小さな手だと凄く頑張らないといけない曲というのがあります。その頑張りは果たして《音楽》としてどうなのだろうか?と思ったりします。

ピアノの曲は沢山あるし、指定のコンチェルトだって色んな曲が用意されているのですから、色んな意味で”自分に合った”曲を演奏するというのは、プロフェッショナルを目指すならなおさら大切なことだと思います。

ピアノは上半身で頑張っても鳴らない

昨年も思ったのですけれど・・・

ネルセシヤンとピサレフという素晴らしいピアニストと並んで弾くコンテスタントたちの弾き方を見ていて明らかに違うのは、

コンテスタントたちは、肩から上で頑張っているんですけれど、ネルセシヤンとピサレフは、力が入っているのは(上半身ではなく)下半身、腰から下なのです。

並んでいるから残酷なくらいに比べてしまうんですけれど、肩上げて必死に頑張っているコンテスタントたちの音は、ポ~ンと手を投げるように弾くネルセシヤンとピサレフの音にいとも簡単にかき消されてしまいます。

曲を熟知している彼らですから、バランスをよく聴いてソリストを引き立てるように弾いているのですが、それでも響きの豊かさや印象で、つい耳が行ってしまうんですよね。

指は鍵盤を押し下げるに必要最小限のエネルギーだけで、鍵盤の底に着く前にバウンドするかのようなしなやかな背中から腕・手・指の動きが本当に美しいです。

無理のない自然な奏法ってこういうことだなと思いました。

それは、脱力とか手首のクッションとかそういう小手先の話ではないのです。

・・・ということで、楽しませていただきました。

ファイナルをこの形式にしようと思いついた人、天才です。

KAWAIさん、そのクリエイティビティで頑張ってください!

(私は子供の頃からKAWAIユーザー、国産ではKAWAIラブです)

データ|第3回SHIGERU KAWAI国際ピアノコンクール

第3回SHIGERU KAWAI国際ピアノコンクール ファイナル結果

第1位:イリヤ シュムクレル(ロシア)
第2位:ハリソン ハーマン (オーストラリア)
第3位:ポリーナ サスコ (ウクライナ)
第4位:池邊 啓一郎 (日本)
第5位:荒石 果穂 (日本)、丸山 凪乃 (日本)
聴衆賞:イリヤ シュムクレル (ロシア)

【日時】2019年8月3日(土)13時開演
【場所】東京文化会館小ホール

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