ゴールデンウイーク恒例となったクラシック音楽のお祭り、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017。
今年も行って参りました!
それも2日間。
普段からクラシックに親しみ、日常的にコンサートにも出かける私ですが、ラ・フォル・ジュルネはひと味違う楽しみがあります。
それは、ラ・フォル・ジュルネがお祭りだから。
今年も楽しんだ!
ラ・フォル・ジュルネ2017レポートです。
5つのイベントを楽しんだ私のラ・フォル・ジュルネ2017
ラ・フォル・ジュルネが楽しいのは、思いもかけない体験ができることです。
まさにクラシック音楽のテーマパーク!
数あるコンサート・関連プログラムから今年はこの5つを楽しみました。
- シンフォニア・ヴァルソヴィア演奏会
- アーティストが語るラ・ダンス
- 音楽は奇跡~アレクサンドル・ギンジン マスタークラス
- 踊るダンスから聴くダンスへの道程
- 栄華のバロックダンス
レポしながら、ラ・フォル・ジュルネの凄さを熱く語りますよ~♪
シンフォニア・ヴァルソヴィア|普段なら絶対にチケットを買わないコンサート
こんなに楽しいラ・フォル・ジュルネですが、実は前売り券を買ったことがありません。
毎年当日券で行きます。
超一流アーティストが世界中から集まるので、人気の公演はあっという間に完売してしまい、当日券が残っているような演目はマイナーです。
しかし、またそれが楽しいのです。
なぜなら・・・
私は、クラシックが大好きです。
好きな作曲家・好きな演奏家が沢山いて、好きな作品が山ほどあります。
なので、普段自分でチケットを買って行く演奏会は、お気に入りのものばかりを選んでしまいます。
ラ・フォル・ジュルネでは、当日残っている公演でふらっと行きます。
すると、絶対に自分からは選ばない公演に遭遇するという楽しみがあるのです。
今年聴いたのはこちらの公演。
ジョン・アダムス:オペラ「ニクソン・イン・チャイナ」から主席は踊る
ストラヴィンスキー:サーカス・ポルカ
コープランド:ロデオ
管弦楽:シンフォニア・ヴァルソヴィア
指揮:廖國敏[リオ・クォクマン]
ストラヴィンスキーはともかく、アダムスとコープランドはなかなか聴けません。
20世紀を代表するヴァイオリニストであるメニューインが創設したシンフォニア・ヴァルソヴィアは素晴らしい響きと冴えたリズム感でダンスを聴かせてくれました。
アーティストが語るラ・ダンス|たまたま行ったイベントで面白い話が聞ける
ラ・フォル・ジュルネの凄いところは、有料公演の半券で聴けるコンサート・イベントが沢山あります。つまり、
実質0円!
今年も、有料公演としてチケットを買ったのは↑のシンフォニア・ヴァルソヴィアひとつ。
あとは半券で聴けるイベントを楽しみました。それも二日間・・・
まず一つ目。
シンフォニア・ヴァルソヴィアの公演が終わったところで、ちょうど間に合ったのが、これです。
特別編「アーティストが語るラ・ダンス」
ダニエル・ロイス(指揮)
オネゲル:ダヴィデ王(聞き手:小田島久恵)
オネゲルは、スイス・フランス語圏の生まれでフランス六人組のひとりとして20世紀前半に活躍した作曲家です。
オラトリオ「ダビデ王」は、旧約聖書の登場人物であるダビデ王の物語をルネ・モラが舞台作品とし、ひとりのナレーターによって物語が朗読され音楽が進んでいくというオラトリオです。
・・・とあちこちの解説を読んで書いていますが、実は聴いたことがありません。そもそもオネゲル自体がピアノソロの作品を描いていないのではないかと思います(ピアノ協奏曲はある)
なので、オネゲルは私にとって、とっても遠い作曲家なのです。
この日は、翌日の公演で朗読されるというフランス人俳優バリサさんの話も交えながら、オネゲル『ダビデ王』の話を聞くことができました。
オネゲルは、教会音楽の影響を受けているものの世紀末的で、おどろおどろしいタイトルの作品が多く、ちょっとオカルト趣味じゃないかみたいな本音が面白ろかったですね。
聞き手の小田島さんが、「日本人には絶対神の怒りというのは、日本人には遠い感覚・・・」とおっしゃっていたのにはうなずきました。
5/5(金・子どもの日)は、以上2つのプログラムを楽しんで帰途につきました。
音楽は奇跡~アレクサンドル・ギンジン マスタークラス|一流演奏家のレッスンを聴講できる
帰宅してから、パンフレット(プログラム)を見ていたら、なんと!アレクサンドル・ギンジンが翌日5/6にマスタークラスに登場するではありませんか!
「これは行かねばなるまい!」
最終日の5/6は朝から出掛けました。
アレクサンドル・ギンジンとは
アレクサンドル・ギンジンは、1977年モスクワ生まれ今年40歳のピアニスト。
エリーザベト王妃国際コンクール第2位、2007年、クリーヴランド国際ピアノ・コンクール第1位を受賞し、世界中で演奏活動を繰り広げています。
ネットで聴いたクリ―ヴランドコンクールでの演奏が、鳥肌が立つほど素晴らしかったです。
アレクサンドル・ギンジン マスタークラス
受講曲:ショパン マズルカ風ロンド F dur op.5
ピアノ:スタインウェイ
受講生は、桐朋学園大学大学院生のなかなかチャーミングな方。
もっとストーリーを伝えましょう
こういうマスタークラスでは、まず最初に曲を通して弾きます。
いつも、いつも思うのですが、みなさん、最初は本当に、鍵盤をただ押しているだけで何のイメージもないんですよね。
ギンジンの第一声も、
素晴らしい!音がきれいで心地よい!
と練習してきたことに対しては敬意を表した上で、こう続きます。
もっとストーリーを伝えましょう。
もっと劇的に表現しましょう。
どういうことかというと・・・
たとえば、ロンドという曲の性質上、くり返し登場するフレーズがありますが、それはもっとキャラクターを立ててみたい。
そして、それぞれのキャラクターはもっと変えてみたい。
イマジネーションというものを人々に伝えなければならない。
そうなんですよ。上手なのに何も伝わらない演奏ってたくさんあります。
そういうことをなかなか日本で学ぶのは難しいという問題が現実にあります。
・・・一流音大と言われるところですら・・・です。
イマジネーションを伝えるためのテクニック
さらに、ピアノという楽器は、絃をハンマーが叩く打楽器です。だからこういう問題が起こります。
弾き方が垂直。
それに対してはこう処方します。
弾き方が垂直になってしまうのはイマジネーションの問題です。
音楽は横に、線が流れているという意識で・・・指で弾くのではなく手のひらで弾く感じ、
指はスパゲティのように鍵盤に溶け込む感じ、
クリスタルのように繊細に。。。
正しい鍵盤を叩いて音を出しているだけではいけないのです。
我々は音楽家ではなく画家。
指は、小さなブラシ。
手首は、もう少し大きなブラシ、
そして、一番大きなブラシは胴体。
どのブラシを使っているのか意識しなければならない。
音楽とは奇跡
音楽とは何でしょう。
ギンジンは言います。
音楽は奇跡。謎であり、詩で表現される。
お客さんを引き込んで、連れていかなければならない
音楽の奇跡を表現するとはどういうことなのか、こう語ります。
表現法は沢山ある。
右手と左手と、それだけではなく、左手の伴奏の中でも重要度があり、それは自分で決めること。演奏芸術では、クレッシェンドするかとら思わせてしない、ということが大切。なぜなら、そのまま大きくなってしまったら面白くない、飽きてしまう。
フェイクがあることでお客様はどうなるんたろう、どうなるんだろう、と付いてきてくれる。
では、そのためにどうしたらいいかというと・・・
感情は音楽よりも先に来ないと表現できない。
要するに、もっと感じて、繊細に感じて、そして敏感に反応しないと聴衆を感動させる演奏はできないということで、それでは演奏の存在意義はないということなのです。
もう、ひと言ひと言がしみじみ響いたマスタークラス。
これが、半券で聴けて、実質0円なのですから、ラ・フォル・ジュルネって凄いのです。
踊るダンスから聴くダンスへの道程|超お得で美味しい関連イベント
ギンジンのマスタークラスで頭と心はすっかり満ち足りたところで、気づけばお腹が空っぽ。
屋台でカレー&ナン&タンドリーチキンをゲットし、中庭でまったりいただき、心身ともに満たされたところで、午後の部行きました。
踊るダンスから聴くダンスへの道程
〈バロック誕生の17世紀、そして18世紀へ〉
中野振一郎(チェンバロ奏者)
中野振一郎先生は、チェンバロ奏者・バロック音楽の第一人者です。
しかも中野先生は面白すぎるのです。
関西弁で繰り広げられる話は、「吉本」からスカウトに来ても不思議なないレベル。
この日も始終笑いの絶えない和やかな講演でした。
音楽的な内容のポイントは、ふたつでした。
- 踊るための舞曲が、時代の変遷とともに聴く音楽になっていった移り変わりのプロセス
- 聴くための音楽になったとは言え、踊りとして残ったものもある。
踊りとして残ったもののひとつがポロネーズ。
もうひとつがメヌエット。
そしてこのメヌエットがレントラーになり、ワルツになる。。。
ということで、最後にはレハール 「メリーウイドウ・ワルツ」の チェンバロ用編曲で幕が閉じました。
関西弁のノリノリの話で、
17~18世紀バロック音楽のチェンバロ演奏を
21世紀の東京で聴く・・・
時空を縦横無尽に超えた時間はとてもエキサイトでした。
これが半券で聴けて実質0円なのですから、ラ・フォル・ジュルネって凄いです。
栄華のバロックダンス|思わぬバロックダンス体験
そして、最後は、なんとバロックダンス体験してしまいました。
アトリエ・ラ・ダンス
栄華のバロックダンス~舞曲のルーツを辿る~
浜中康子・北条耕男(バロックダンス)
伊藤真(ヴァイオリン)・島内亜津子(ピアノ)
浜中康子先生は、日本では数少ないバロックダンスの第一人者。
DVDも出していらっしゃいます。
バロックダンスは、バッハのフランス組曲などバロックのレパートリーを弾くには知っておきたいものなので、私も全2巻のDVDを繰りかえし観ました(というか現在進行形)
この日は、実際にメヌエットを踊ってみましょう!ということで、実際にステップを体験することができるという願ってもないプログラムに遭遇することができました。
この貴重なイベントが半券で参加できて実質0円なのですから、ラ・フォル・ジュルネって本当に凄いです!
まとめ
今年もラ・フォル・ジュルネをたっぷり楽しみました。
ここに来ると、音楽って本当に素晴らしいな~としみじみ思います。
ギンジンの言葉を借りれば
音楽は奇跡
です。
ということで、クラシックにちょっとだけ興味あるけれど、普段の演奏会はなかなか敷居が高くて・・・という方にこそ出掛けて欲しいのがラ・フォル・ジュルネです。