J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲とブラジルの作曲家による無伴奏チェロ作品を組み合わせた面白いプログラムによるアントニオ・メセネス 無伴奏チェロリサイタルを聴いて来ました!
備忘録的です。
アニトニオ・メネスス|ブラジル出身、ドイツで学んだチェリスト
アントニオ・メネセスは1957年ブラジル・レシフェ音楽一家に生まれ、10歳でチェロをはじめ、16歳でアントニオ・ヤニグロと出会い、門下生となり渡欧。デュッセルドルフ、後にシュトゥットガルトでヤニグロに学び、1977年ミュンヘン国際音楽コンクール、1982年チャイコフスキー国際コンクール優勝。
欧州、北南米、アジアの主要音楽都市で、ベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管、ロンドン響、イスラエル・フィル、サンクト・ペテルブルグ響、スイス・ロマンド管、ニューヨーク・フィル等のオーケストラ、カラヤン、ヤンソンス、アバド、プレヴィン、ブロムシュテット、テミルカーノフ等の指揮者と共演。 1998~2008年ボザール・トリオに参加。
2008年よりベルン音楽院で後進の指導にあたっているようです。
バッハ無伴奏チェロ組曲のための前奏曲をブラジルの作曲家に委嘱
バッハの無伴奏チェロ組曲と初めて名前を聞く作曲家の無伴奏チェロ作品が交互に並んだプログラムを面白さと不思議さで期待したのですが、
バッハ無伴奏のための“前奏曲”を母国ブラジルの同時代の作曲家に委嘱した
という経緯でした。
色々感じる事はありますが、まず、率直に言って大バッハの作品のための“前奏曲”という大仕事、私が一番気に入ったのはバッハ無伴奏チェロ組曲第3番のために描いたプラドでした。
1番のミランダは、バッハ1番のあちこちのフレーズを引用しているもののつぎはぎ感が否めず、しかも物凄く弾きにくそうで、メネセスってこんなんだっけ???という感じ(笑)バッハが始まった時には水を得た魚のように生き生きして、ついでに弓が短く見えました。
6番のパディーリャは、現代音楽というか無調っぽい始まりで後半にバッハ6番プレリュード冒頭を彷彿させるフレーズが繰り返され、そのままアタッカで始まるかと思いきやそうではなく、結局陳腐な印象が残りました(笑)
3番のために描いたプラドはバッハの名前〈b-a-c-h〉の音列をテーマにして展開、発展、創造され、それ以外のこだわりなく、つぎはぎ感が全くなかったのがとても好ましく感じられました。
真の共感なしに好演なし
バッハの無伴奏チェロ組曲と現代に生きるブラジルの作曲家による作品の演奏を交互に聴いて、一番感じたのは、やはり、メネセスと言えど、共感なしにいい演奏をするのは無理なのだなという事です。バッハの作品と他の作品では心に届くものが全然違います、少なくとも私は歴然とした違いを感じました。
メネセスのチェロはさすがで、神でした!
音程が本当に気持ちいい。正確というより、やや高めで強調されるところの鳴り方とか、低めが落ち着くところの落ち着き方とか、もう痒いところに手が届く心地よさ!
弓さばきも軽やかで、弓が物凄く短く感じました。
音楽の流れがとても自然で、作為的なところが全くなく、ヒーリング効果抜群!周囲には寝落ちしている人続出(笑)気持ちはわかります。ホント気持ちいい演奏でした。
最近読んでいるケニー・ワーナー著『エフォートレス・マスタリー』に書いてある事そのものの達人の演奏にどっぷり浸ってきました。
アントニオ・メネセス 無伴奏チェロ・リサイタル プログラム
♪アントニオ・メネセス 無伴奏チェロ・リサイタル プログラム
- ロナウド・ミランダ:エティウス・メロス(バッハへのオマージュ)
- J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
- アルメイダ・プラド:プレアンブルム
- J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV1009
- マルコ・パディーリャ:インヴォカシオ第1番
- J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番 ニ長調 BWV1012
アンコール:クロビス・ペレイヤ『カント・ド・セイゴ』
2023年11月12日(日)14時開演
横浜市港南区民文化センター ひまわりの郷