本は、著者の想いが熱ければ熱いほど面白い・・・とは限りません。
読者を白けさせてしまう事もあります。
「勝手にやってて・・・」
とうんざりする事も少なくないです。
「熱い情熱と醒めた目」こそ著者の力量でもあります。
自分の想い入れの強い分野の本は、読むときにもおのずと気合が入ってしまいます。
共感できる時には、良き友に出会ったような感激を味わいますし、逆に、神経を逆なでされる思いに、途中で閉じてしまう事もあるでしょう。
これは、音楽・ピアノを純粋に愛する著者が、サンソン・フランソワという私にとってなじみの薄いピアニストを魅力的に語ってくれた本です。
この本は、実は究極の恋愛ノンフィクションなのである。(P.3)
そう自ら語るように、著者はフランソワの熱烈なファンであります。
幼少時より音楽専門教育を受け、早くからピアノの演奏活動を始めるも、20代半ばで中断し、波乱の人生を歩んでいる多才な著者ならではの切口と語りで、広く一般の方々が楽しめる内容です。
音楽が好き・・・
ピアノが好き・・・
ショパンが好き・・・
ラヴェルが好き・・・
ドビュッシーが好き・・・
そして、もちろんフランソワが好きという方の必読書です。
私は、フランソワはほとんど聴いた事がなかったのですが、CDの試聴記からYoutubeの音源をいくつか聴いてみて、フランソワというのは、なるほどアブナイ魅力にあふれた愛すべきピアニストである事がよくわかりました。たとえばこれ↓↓↓
はっきり言って・・・かなり危険なピアニストです(笑)
はまったら抜けられなくなりそうですね。。。
「第十章 フランソワのピアニズム」は、全てのピアノ弾きと、お子さまにピアノを習わせている親御さまに是非読んでいただきたいと思います。
ここでは、ベルカントという西洋音楽の根底に内在する理念と、それに基づいたベルカント奏法についてわかりやすく述べられています。
それは、ヨーロッパ伝統社会に立脚したものです。
それゆえ、そのような伝統を持っていない日本という国に生まれ育った私たちには、実は非常にわかりにくく、方向を誤りやすいのです。
そんな日本のピアノ界の現状への警告を含んだ、しかし、温か~い著者からのメッセージでもあります。
・・・個人的には、このテーマで1冊書いて欲しいと思っています。
ちなみに・・・私のツボに一番はまったのは
フランス人のエスプリは、・・・関西人の「ボケとツッコミ」に似ている。
(P.175~178)
さすが!神戸山の手出身のお坊ちゃまです。
・・・是非読んでみてくださいね~。